瞬く間に過ぎた1週間でした。皆さん、いかがお過ごしでしょうか?さて、今日は「2月カーニバルフィーバー」、「復活フランスの兵役義務」、「フランス教育改革の行方」の3本です。
2月カーニバルフィーバー!
フランスでは今、カーニバルが真っ盛り。キリスト教徒の国では2月は謝肉祭(Carnaval)の季節です。あちらこちらで仮想パレードや仮想パーティーが繰り広げられています。エトランジェの私にはお祭りというよりも、どんちゃん騒ぎとしてしか写らない光景ですが、長くどんよりとした寒い冬を吹き飛ばすには、絶大の効果があるようです。
食べたい放題食べる
さてキリスト教徒たちは、キリスト復活祭(Le Pâques)を迎える前に、肉などの贅沢食を断ち切り、節食するのが習わし。これが謝肉祭です。さて、謝肉祭の前に、おもいっきり好きなものを食べたい放題食べて、日頃のできないような道化や仮想のどんちゃん騒ぎをしても良いという習わしがあります。およそ3日間~1週間ぐらい続きます。日本ではブラジル、リオのカーニバルで知られていますですが、フランスでは、ニースの仮想パレードやダンケルク(フランス北部) の仮想祭りなどが代表的です。
気も遠くなる長い冬
カーニバルはもともと、長く厳しい冬の終わり、春の到来を待ちわびるゲルマン人の農耕祭から由来したものと言われています。この民衆的行事がキリスト教と交わって現在の習わしとなったようです。確かに、春夏秋冬、四季がはっきりとした日本と違い、ヨーロッパの冬は気が遠くなるほど長いのです。仮想したり、暴飲暴食したりして、思いっきり羽目を外したくなる心境がわからないでもありません。
復活 ?フランスの兵役義務!
マクロン大統領は大統領選挙中に、彼の提案課題のひとつに、兵役義務を復活させる意向を示していました。そこで、この度改めて、18~21歳の男女を対象に兵役義務への具体案を発表したのです。
1996年、前シラク大統領がフランスの徴兵制の段階的な廃止を実行し、フランスでは2001年には徴兵義務は完全になくなりました。ですので、現在のフランスの軍隊は、職業軍人としての志願者だけで構成されています。
これに反し、この度マクロン新大統領は、義務的兼ね合いを含んだ「3~6ヶ月間の兵役制度」の可能性があること示唆したのです。
兵役義務?でも予算は?
しかしながら、簡単に兵役義務を復活させるといっても、その費用は莫大で、推定でおよそ2~3億ユーロの年間予算が必要とされています。果たして、これだけの予算を打ち出すことができるのか、専門家の間では意見の食い違いが出ています。また、莫大な額をはたいてまで、たった数ヶ月間の兵役義務に、どれだけの効果があり得るのかも疑問視されているのです。
兵役義務のあり方
他方、兵役義務のあり方にも波紋を呼んでいます。マクロン大統領は、この度の兵役義務のあり方をいわゆる「徴兵義務」とはせず、あくまでも「国民教育」の沿線上にある「市民としての意識的義務」であることを強調しました。要するに、軍事にかかわる義務ではなく、教育上、国を守る意識を育てることを目的としています。この背景には、度重なる過激派によるテロ事件の影響があり得ます。しかし義務の対象が、防衛省や教育省、内務省管轄まで関係し、その予算分担をめぐる意見の食い違いを醸し出しています。
3段階に分かれた義務制度
そこで政府は、まず3段階に分けて義務化を進めていく方針です。
まず、11~16歳の男女を対象に「防衛と市民権」をテーマにした週単位の義務期間の設置。次に、「通過儀式」として16歳になったら、軍事またはアソシエーションや公共団体での活動を経験する義務。最後に、16~25歳の男女を対象に、実在する社会的機関での具体的な活動義務を推し進める。
以上の義務制度を4月末までにまとめ、国会で討議する予定です。そして、早くて来年初めに試験的な段階までこぎつけたい意向です。
しかしながら、そうでなくても自由をこよなく愛するフランス人、紙の上ではうまくいっても、事実上このような義務制度が成功するのは、ほぼミッション・インポッシブル?な気がするのですが、皆さんはどう思われますか?
フランス教育改革の行方
フランスでは、「大臣が変わる度に教育制度も変わる」と言われているほど、教育改革の好きな国です。さて、この度新しく仏教育大臣に就任したジャン・ミッシェル=ブランケ氏が、この14日に発表した新しい改革とはどんなものでしょうか?
バカロレア改革
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、フランスでは高等教育、つまり大学まで進むにはバカロレアと呼ばれている、中等教育レベル取得を認証するべく試験に合格しなければなりません。このバカロレアに活を入れようとしたのが、まず最初の同大臣の改革です。
テルミナル ・クラス (最終学年)の喪失?
まず、通常「テルミナル(最終学年)」と呼ばれている18歳の生徒のクラス名を「成人学年」と改名するとのこと。何のことはない、ただ呼名を変えるだけと思いますが、同大臣にとっては?非常に重要なことらしいのです。つまり、「成人学年」とは、ただ単に学業を終了するクラスではなく、さらに進んだ高等教育への道が開かれる、大人への第一段階で、学業に対する哲学的意識を強調するものだそうです。(どうも理解に苦しみます・・・?)
口述試験の導入
さて、今回のバカロレア改革の画期的なもののひとつに、口述試験の導入があります。およそ20~30分の口述試験が主要課題のひとつとして選択されることになったのです。具体的には、日本の高校2年生(16-17歳) にあたるクラスの科目の中に、口述試験を取り組む仕組みです。口述試験といってもピンとこないかもしれませんが、要するに選択したテーマやプロジェクトを試験官を前にして、「口頭説明する力を養う」ものということです。
人前に出て話せないようなはにかみ屋さんには、相当ハンディのある試験だと思いませんか?
4項目に絞られるバカロレア試験
次に画期的な改革は、バカロレア試験の項目が4つだけになるというものです。
まず、春休み終了後すぐに生徒自身の選択した主要課題に関わる2つの試験が待ち構えています。そして、6月に恒例の「哲学筆記試験」と「口述試験」の2つ。この4つの項目のみがバカロレアの試験となります。「哲学」が残ったのは、さすがフランスです。(拍手!)
日頃の学業成績がさらに重要視
以上がバカロレアの採点の60%を占めていますが、残りの40%は日頃の学業成績により左右されます。すなわち、プロミエール ・クラス(16-17歳)時に2度、テルミナル・クラス(17-18歳)時に1度、バック・ブロン(bacs blancs)、いわゆるバカロレアの模擬試験のようなものを実施し、それらの結果を重要視するというのです。もちろん日頃の登校頻度や成績なども考慮されます。
L, ES, S の廃止
最後の主要改革案は、L, ES, S の廃止です。
フランスでは、高等教育へ進むにあたり、進路を3分野から選択しなければなりません。Lは、Littéraire (文科) 、ESは、Economique et Social (社会経済)、Sは、Scientifique (自然科学) という分野です。日本でも文科系、理科系、政治経済系など各大学での専門分野が分かれているのと同じだと思ってください。
人為的な序列制度を避ける
しかしながら、昨今、この分野の違いに大きな序列意識が生まれてきていることを、同大臣は指摘しています。確かに、進む分野によって次の職業が決定づけられます。あえて言えば、長い人生の半分以上を、選んだ職業について働かなくてはなりません。さて、現在の職業収入上の優先度?を考慮すると、(フランスでは) 理科系が断然大人気、次に社会経済系、最後に文科系というようになります。この人為的な序列意識を廃止したいというのが、この度の改革案のひとつです。が、今のところ、具体案はでていません。
教育の改革はバカロレアの改革から
確かに、フランスでは「バカロレアを触ると未来の国民意識が変わる」といっても過言ではないくらい、とても重要な位置を占めています。マクロン大統領率いる新政府は、今回の教育改革を2021年頃を目途に実現したい意向です。
さて、どうなるか、すでに喧々諤々の議論が飛び交っています。
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