近年では外国人技能実習制度を活用する企業が増え、日本にも多くの外国人がやってくるようになりました。もともとは2011年3月11日の東日本大震災の被災地の復興や2020年の東京オリンピックの準備に向けて労働力不足が指摘され、それを補うために始められたこの制度ですが、日本の技術を外国人に伝え、外国人がそれを持ち帰ることによって国の発展に貢献できるということから近年では多くの企業がこの制度を利用するようになりました。しかし、外国人が日本で働く上でまだまだ問題が指摘されています。それならば、実習生は日本でどのような問題に直面しているのでしょうか。ここではこの外国人技能実習制度を活用して日本で学んでいる実習生たちが抱えやすい問題について紹介します。
契約書と賃金が違う
賃金が安すぎる
外国人技能実習制度で日本にやってくる実習星たちは、日本人と同等の給料をもらうということが決まっています。よく「外国人は労働力が安い」などという人がいますが、外国人を安く雇うということ自体違法なのです。外国人技能実習制度においてもそれは禁止されています。
しかしその一方で、いざこの制度を利用して日本にやってきたら賃金が時給400円だった、などというトラブルは後を絶ちません。せめて最低賃金ならば良いのですが、それをかなり下回る賃金が支払われているという外国人も少なくありません。
最低賃金は地域によって違います。例えば、平成30年度の地域別状況を見てみると、最低賃金が最も高いと言われる東京は1時間あたり985円ですが、最も低くなると鹿児島県の761円と大きく差が出ることがわかります。外国人もせめて最低賃金をもらえるという状態であれば良いのですが、これの半分以下しかもらえない外国人も少なくはありません。
約束が守られない
そして外国人技能実習においては、日本にやってくる外国人たちがこの最低賃金を下回るような賃金に納得しているというわけではありません。彼らは自分の国を出る時、日本人同等の賃金がもらえるという契約書に同意してやって来ます。そしていざ日本に来て「契約書と賃金が違う」という状態に直面してしまうことが多いのです。
そのため、最近では外国人技能実習生が失踪してしまう状態が続いているという指摘があります。特に賃金を巡ったトラブルにより、2017年には7,000人を超える実習生が失踪したと報道されました。
残業代や労働時間の問題
さらに、実習生の中には残業しても残業代が払われていない、夜遅くまで無理やり働かされる、全然休みがない、などという問題を抱えていることもあります。上司から「仕事が遅い」と怒鳴られた、殴られた、などという暴力行為を受けている外国人もいると言われています。
途中で帰国するわけにはいかない状況
借金をして日本に来ている
もしも賃金に満足できないならば、さっさと自分の国に帰ったら良い、と感じる人もいるかもしれません。しかし、実習生にはそうはいかない事情があります。
もちろん国にもよりますが、例えばベトナムの場合、実習生たちは渡航費等、約100万円を借金して日本にやってくるのです。そして日本で働いて得た給与から毎月返済をしていかなければいけないのです。
つまり、借金をして日本にやってきた以上、給与を得ることなく国に帰ってしまったら借金だけが残るということになります。日本人の感覚でも100万円の借金はそれなりに大きいですよね。それが日本よりも物価の低い国から来た人にしてみたらどれくらい莫大な金額なのか理解できるのではないでしょうか。
家族を置いて日本にやってきた
中には、家族を養うために手に職をつけられるよう、子供を置いて日本に来ることを決断する女性もいます。幼い子供を実家などに預け、年単位で日本に来ることを決断するというのは簡単なことではありません。子供のために、家族のために頑張ろう、と思って日本に来たのに、簡単に帰国するというわけにはいかないという問題もあります。国に帰ったところで、作ってしまった借金を回しながらしっかりと生活ができる余裕などない、という人も珍しくありません。
相談できる場所がない
職場には相談ができない
そして外国人技能実習生が抱える問題の1つには、職場で何かあったときに相談する相手がいないという問題が挙げられます。日本人ならば、何かで躓いたら同僚に相談したり、上司に相談したり、ということができますよね。しかし実習生の場合は日本語が通じないということもありますし、上司から暴力を振るわれていたりしてそもそも上司に相談できるような状態では無い、ということも少なくありません。
また、仲介役を担った斡旋団体に「契約書と書かれている賃金が違う」と訴えても「あなたの国で交わされた契約書に関してはよくわからない」と返されてしまったり、無視されたり、ということもあります。賃金がしっかりと払われていないということを職場で話したことにより、解雇されてしまった実習生もいます。そうなると彼らは借金だけ残して国に帰らなければならず、泣き寝入りすることになってしまうのです。
実習生を応援する団体もある
もちろん、このような外国人実習先を保護する団体等が全くないというわけではありません。駆け込み寺のような感じで保護団体を運営している会社もありますし、企業から不当な扱いを受けた外国人に対し、政府に手紙を書く手伝いをする事務所などもあります。
特に日本語がわからない外国人実習生にとってこのような保護団体は非常に重要です。彼らにも人権があるのですから、不当に扱われたときなどに相談できるような場所が確保されていなければいけません。そして何よりも、不当に扱われるということ自体あってはならないのです。
今後労働力がさらに必要になる
少子高齢化も手伝い、日本では労働者人口が減りつつあります。その一方で2020年には東京オリンピックを迎えますし、人手不足が問題となり、これからどんどん外国人労働者を受け入れていかなければならないという状況にもなるかもしれません。
日本は確かに小さな島国ですが、世界的には経済大国であり、政治的にも他の国に影響を及ぼす存在力のある国です。そのような国が発展途上国の人々を迎え、契約書とは違う業務内容を提供したことによって疾走されてしまうというようなことがあれば、それは日本の沽券にかかわるのではないでしょうか。確かに、あわよくば外国人労働者を安く使おうと考える余裕のない経済状態にも問題がありますが、やはり外国人をバカにしたり、彼らの人権をないがしろにするといった行いはしてはならないのです。
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