私は、フィリピン・セブ島に17年以上滞在し、その間、ずっとフィリピン人たちと仕事をしています。また、単身でこちらへ渡って来ましたので、こちらで結婚しました。結婚生活は今年で丸15年となり、家内(フィリピン人)との間に長女と長男の二子をもうけました。そんな中で、私にとっては、ここセブでの生活は、日常であり、当たり前の事となっていますが、私の労働環境が日系企業であり、私に期待される機能は、大きくは、日本側と現地フタッフ(フィリピン人)との調整となりますので、常に日本とフィリピンの感覚の違い、ギャップを感じながら仕事をせざるを得ませんし、家庭内でも、その文化の違いを受け入れつつ、どうにもならない場合にはちゃんと話し合いをして調整しつつ、何とか暮らして来ましたが、ここまで来てもまだまだ、日本人としての想像を超える、びっくりするような事が時折、起こっています…
十年一昔と言いますが…
フィリピンでは10年間で大きな変化が
さて、昨今の日本の状況を見聞きしておりますと、過去数十年、物価は下落傾向、経済も停滞し、この「十年一昔」と言う格言の意味を捉えづらいかも知れません。
しかし、フィリピンを始め、所謂、発展途上国と言うもの、元々のスタンダードが低水準であり、10年前と今とを比べた場合、技術発展とか社会インフラの整備等々は遅々として進まないが、殊に物価とかの動きを見ていると、日本のそれとは比べ物にならない急激な上昇をしています。
さて、ここから述べます亊について、一部の方には夢を打ち砕く内容となり、拒否反応を示されるかも知れないと言う事も理解しつつ、敢えて、現実を述べるのですが、例えば、10年前、20年前に、リタイヤメント後、フィリピンで暮らせば、年金収入だけでも、結構豊かな生活を出来るとした情報が日本に流れ、未だに、それが独り歩きしているような状況があるように思われます。
フィリピンの物価は高くなる一方!?
ところが、先に述べた、ここフィリピンでの物価上昇たるや、年率平均8%弱で推移しており、要は、10年経てば、物価は、ほぼ倍になる状態が、私の過去20年近くのフィリピンセブ島滞在の中で観察されております。
従って、各種出版物、或いは、ホームページ、ブログ等の記事から情報を取る場合、それらが何時、発行されたのかに注意する必要があります。
それともう一点、こうしたリタイヤメントライフを仲介する業者の存在がありますが、そうした業者は、当然、常にビジネスチャンスを伺っているので、敢えて、私が申し上げるような情報を避け、出来るだけ、顧客を引っ張ろうとする動きをするのも、半ば当然と言えば当然の事です。
現実を言いますと、私が現在、ここに居られるのは、色んなところで日本のスタンダードを捨て、現地化出来ているからに他なりません。
現地生活の実態
日本に帰国する際の楽しみはやっぱり・・・
例えば、私、仕事の都合で年に一回は日本へ一時帰国しますが、その際に楽しみにしているのは、熱い湯舟に浸かる事です。
こんな些細な事ですが、例えば、ここフィリピンで浴槽を設置し、お湯を沸かして張り、毎日、入浴するような生活を送ったら、特に、ここの上水道の料金は、日本より遥かに高いので、日本よりもコストが高くなります。そして、それは、私にとって現実的な事ではないのでしていないのです。
また、私の家には冷水シャワーもありません。なぜかと言うと、ここの水は、硬水で特にカルシウム分が多いので、シャワーを設置しても、早ければ3ヶ月程度で、目詰まりを起こし、交換が必要になる為、その手間とコストが嫌になり、現地の人々がとっているやり方で入浴をするようになったからです。その方法とは、大きめのゴミバケツのような容器に水を張り、そこからヒシャクを使って水を汲み、頭からぶっかける方法です。
フィリピンの食事事情
食事もそうです。家内が現地人(セブ生まれのフィリピン人)と言う事もあり、食事をする際には週に半分以上はいわゆる現地食で、その大半は飯と魚の干物と野菜程度のシンプルなものです。更に突っ込みますと、野菜類は季節による変動はあるものの、特に日本で言うところの葉物野菜(キャベツ、レタス、白菜等々)は日本と同じか寧ろ高いくらいの感覚です。
因みに良くフィリピン人は野菜嫌いと言いますが、現実を言えば、野菜を常食できる経済レベルに達している人は恐らく上位30%位にしか満たない…と言う側面も実はあります。
また、ここはインドのカーストのような目に見える身分制度はありませんが、植民地時代から綿々と続く社会構造の中で、極端に言えば、「大地主と他多数庶民」のような形での経済格差が極端であり(*この国ではかつての日本のような農地解放は未だになく、大地主制が存続しています)、その他大勢の庶民が暮らすような場所で家賃他が安いからと言って、先進国の人間がそうしたところで暮らそうとすれば、盗難他のトラブルに巻き込まれる確率が高まるだけです。
フィリピンの医療事情
また医療面も他の東南アジア各国に比べ、機器類は先進国に近いレベルで揃っていても、それを利用するには、日本の皆保険システムのようなものが存在していない事もあって、日本よりも高価になります。更には、肝心の医師のレベルが低い為、日本なら全然問題なく助かっているレベルの病気でも、ここでは下手を打てば死に至るケースもありえます。これについては、例えば、ここの上流階級の人々に癌が見つかった場合、まず間違いなく、嘗ての宗主国である、アメリカへ出国して治療を受ける実態をしても明らかです。
そうした所について、逐一、詳細にまで踏み込んでいますと恐らくは一冊の本が出来上がってしまいますので、割愛しますが、要は、フィリピンで日本のスタンダードに沿って、最低限の安心安全、食においては栄養バランス等々をベースにした生活を目指したら、日本と同等かそれ以上のコストがかかるのが実態です。
フィリピンで生活する事のメリットは?
ちょっとの我慢で激安生活ができる
さて、ここまでのお話は、飽くまでも、経済的にメリットを出そうとした場合には、それが薄いと言う事を申し上げたものですが、それでは、ここフィリピンで暮らすメリットは無いのか…と言うと多分、そうではありません。
冒頭の記述とは反対の記述にはなりますが、もし、あなたが、現地の食事とその他生活スタンダードを100%受け入れられると言われるなら、例えば、私のように、日本式の風呂は無くても良いし、もっと発展してエアコンも要らなければ車も要らない…そうした形で都市部ではなく郡部に暮らせば、生活コストはかなり抑えられるのも事実ではあります。但し、これを実践すると、衛生面、栄養面、健康面他に問題を抱える事は目に見えています。何故なら、フィリピン人の平均寿命は未だに60歳前後であり、これには生活のスタンダード、更には医療面の問題が反映されているのは間違いのないところですから。また、郡部は基本的に空港へのアクセスが大変で、万が一、重い病気にかかって一刻も早く日本へ帰りたいとなった場合、大変な事になります。
そんな訳で、ここからは、飽くまでも、ここで暮らすに当たって、都市周辺では、基本的には、日本と同等以上のコストがかかるのだと言う事を前提とした中でのお話になりますが、ここまで物価が上昇している中でも、人件費の伸びが極端に低いので、例えば各種サービスで人件費の占める割合が多いものについては、日本に比べて格安となり、ちょっと得した、或いはリッチな気持ちになれる事もあります。
具体的にはマッサージとかの類で、これもピンからキリまでありますが、基本的にチップ込み日本円換算で1,000円ちょっとのコストをかければ、サウナ(原則無制限)と1時間のフルマッサージが受けられます散髪も男性のお話になりますが、特に拘りがないのであれば、カットとシャンプーで500円程度で済んでしまいます。
酒類の価格も酒税の割合が日本に比べて極端に低い為、例えば日本で普通に流通しているビールとかが、ここでも販売されていますが、関税がかかっているにも関わらず、日本と同等か、安い場合もあります。また現地産のビール(発泡酒ではなく、正真正銘ビールです)であれば、スーパーで330ml瓶を60数円で購入する事も出来ますし、日本人にもその味のファンが多いです。また私は喫煙しないので実感が無いのですが、たばこの価格も、ここは日本に比べて格安になるようです。
KTVも充実!
そうした中で、これも男性限定のお話になるかも知れませんが、こちらで言うKTV、日本で言うところのキャバクラに近いような施設の料金は、普通に遊んでいる分には、一人1時間当たり、飲み放題、歌い放題のセットで、アテンダントの女性にドリンク一杯出したとしても、1,500円前後に収まりますので、実は、これに嵌って定期的に日本からやって来る中高年男性も少なくはありません。
また、気候的に、ここは常夏なので、日本の寒冷地、豪雪地帯のリタイヤメント組の方々が日本の冬場の辛さから逃れるために、冬の間だけ、ここに滞在しているケースもまま、ありますし、これは非常に上手なやり方かも知れません。
更には、他の東南アジア各国に比べて、ここ(セブ)の食事は、日本食のレベルも高いですし、その他各国の移民が多い事もあり、各国の(B級)グルメが揃っており、こうしたレストラン類も上手に探して使えば、食の面でのストレスは軽減できるでしょう。
―基本的には、あなたに合うか合わないか―
これまで色々述べましたが、一番のポイントは、ここフィリピンに居たら生活が安く上がると言う事を前提にしない事です。日本と同等かそれ以上を前提とした上で、メリットが出るか出ないかを考える必要があるかと思います。
しかしながら、そのメリットと言うもの、決して万人に共通するものではなく、飽くまでも、ご自分にとってどうか…と言う事になりましょう…
私の場合、ここに仕事や、愛する家族や、そして、生活の場があるから、ここに居ますが、正直、それは偶々、そうなっただけの事であり、元々、セブが大好きだからここに来た訳でもなければ、今でも、現実を知ってしまっているからこそ、ここが大好きとも言い難い部分も多々あるのは事実です。
でも、反面、私は、フィリピン人たちや、ここの体制には一言あっても、まあ、仕方がないと受入れ、理解出来ているし、メリットの部分も評価した結果、何とか、ここに居られるのです。
要は、そのメリットと考えられる部分が人によって違うので、他者の評価など当てには出来ず、最後は自分がどう感じるか…そこに尽きると思われます。
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