外国人技能実習制度というものを知っているでしょうか。発展途上国から人々を招き、日本の技術を提供してその人の国に持ち帰ってもらい、国の発展に貢献してもらう、という制度ですね。この制度を利用する人には研修生と技能実習生があります。ここではこの外国人技能実習制度を利用して日本にやってくる研修生について紹介します。
研修生と技能実習生とは
最初は研修生、2年目以降は技能実習生
まず、外国人技能実習制度を利用して日本にやってくる外国人には研修生と技能実習生がいます。彼らは日本に来る時点では研修生として入国し、それから1年後、技能検定試験を受けて合格することによって技能実習星になるのです。そして技能実習生になった後、彼らは2年から4年、日本で生活し、帰国します。今までは最長2年だったのですが、2017年11月以降はさらに2年、延長が可能になりました。
具体的な違いについて
まず、研修生の場合は入管法令を満たす、同一作業の単純反復では無い作業が対象業務となります。それに対して技能実習生は技能検定等の対象となる63業種116作業が対象となります。また、研修生の場合、在留資格はあくまでも研修ですが技能実習生の場合は特定活動となります。研修生は労働者とは違い、一切の就労は認められません。しかし技能実習生は労働者として扱われることになるのです。
また、研修生は時間外や休日研修を受けることができませんが、労働者である技能実習生ならば時間外や休日労働も可能です。研修生は生活実費として研修手当を受け取りますが、技能実習生の場合は労働の対価として賃金が支払われます。研修生は民間保険への加入が義務付けられている一方で、技能実習生は国の社会保険や労働保険が強制適用されるという形になります。
なぜ延長されることになったのか
それならば、なぜ今までは3年間だった外国人技能実習制度が5年間可能という形になったのでしょうか。そこには日本人の人員不足が挙げられます。この制度自体は2011年の東日本大震災からの復興や2020年の東京オリンピック開催に向けて、日本国内で足りない人員を補うため、外国人を戦力として活用するために制定されたのです。言わば、日本人だけでは労働力が足りないため、外国人を労働者として迎え入れることにより、需要を満たそうとしているのです。
しかし、2011年から適用されたこの2年延長可能というシステムは、決して労働力を補うためのものではありません。単純に2年間延長することができるというものでは無いのです。3年間の実習を受け、きちんと満了した外国人がさらに2年間、実習を受けるということが可能になるのです。今までは日本に来た1年目は技能実習1号、2年目と3年目は技能実習2号として学び、それを終えたら帰国という形になっていました。そして2016年からは日本の企業がこの実習を終えた人を外国人建設就労者として受け入れることが可能になっていたのです。しかし2017年11月からはこの3年間の実習を終えた人を外国人技能実習3号として迎えることが可能となったのです。
なぜ日本に来るのか
日本は給料が高い!
それならば、なぜ外国人は研修生として日本にやってくるのでしょうか。実は、外国人が日本を選ぶのは決して純粋に日本の技術を勉強したいというだけではないということが指摘されています。
物価が安い国に比べると、日本は非常に物価が高い国です。そんな国に外国人がやってきた場合、物価が安い国では到底貯金することもできないような金額を短期間で集めることが可能なのです。家族のために、親戚のために、日本で日本人と同等のお給料もらうことにより、現地では極めて高額な貯金をすることができるようになるのです。
海外の賃金とは?
しかし、いざ「海外は給料が安い」などと言われても、いまいちピンとこないかもしれませんね。私は3年ほど中国の北京で生活していたことがありますが、その賃金の差に衝撃を受けたことがあります。中国は外国人技能実習制度によって研修生を日本に派遣している国ですので、この人たちが中国で得られる賃金について紹介しましょう。
中国には日本のチェーン店であるサイゼリヤがあります。もしも日本のサイゼリヤでパートをすれば、大体時給800円から900円、夜間ならば1,000円ほどはもらえるのではないでしょうか。中国の場合、時給はもちろん地域によりますが、北京で見かけた求人広告には時給は12元から14元と書かれていました。。分かりますでしょうか。約200円から240円です。もちろんこれに対して制服は貸与ですし、賄いもつくようです。
もしもフルタイムで働くならば、月収は3千元から4千元です。約5万円から6万8千円です!この程度の収入で働かなければいけない状態なのです。
大卒の人は一握り
もちろん、同じ中国人であっても働く企業によって収入は全然違ってきます。大卒ならば、6千元から8千元、つまり約10万2千円から13万6千円ほどの収入を得られる場合もあります。しかし中国は学歴格差が大きく、大卒の人はほんの一握りに過ぎません。大学に行っていなければほんのわずかな収入で働かなければいけない、ということも珍しくは無いのです。
ちなみに、中国のオンラインショップである淘宝網(タオバオ)などは日本でもよく知られていますよね。このようなサイトで何かを購入すると、当然ながらその商品は自宅に届くわけですが、実はこのドライバーたちの給料は極めて高いです。このようなドライバーたちは寒い日も暑い日も嵐の日もスクーターのようなもので配達をしなければいけないこと、お店に買い物に行かずに全てオンラインショップで済ませるという人も多いために場合によってはかなり重い荷物をアパートの5階や6階まで運ばなければいけないなどということにより、かなり厳しい仕事だからかもしれません。サイゼリヤなどレストランなどでフルタイムで働けば月給3千元ほど、つまり5万円ほどですが、このドライバーならば月給8千元、場合によっては1万2千元、つまり13万6千円から20万4千円ほど稼ぐことが可能なのです。
日本での給料は魅力的
誰もがドライバーと同等の給料を稼ぐことができれば良いですが、このような社会ではそれほどのお金を稼ぐ事はなかなかできません。その一方で中国の北京は比較的物価が高いのです。よく「中国は子供がいても共働きが普通」と言われ、待機児童等の問題が多い日本と比べられることがありますが、その実態は女性も働くことができるような環境が整っているということではなく、女性も働かなければ生活ができないのです。
そのような人たちにとって、日本の給料は非常に魅力的です。確かに日本は物価が高いですから、仮に年収400万円だったら、100万円貯金することは簡単ではありませんよね。しかし、中国などの給料が安い国から来た人たちの中には出来る限りお金を残すため、同じ国から来た仲間たちとルームシェアをして家賃を節約し、自分の洋服や食品などにはお金をかけないという人もたくさんいるとされています。このような問題が、外国人が日本にやってくる大きな理由の1つです。
家族のために努力をしている外国人
夕方になると、工場などから外国人たちが自宅に戻っている風景を見かけることがあります。見た目が日本人と違う、なんだか古い服を着ている、などとネガティブな印象を持つ人もいるのではないでしょうか。
私はそのような人たちに対し、「外国人は安く使えるからね」とはっきり言った日本人に会ったことがあります。しかし、いくら相手が外国人であったとしても日本国内に於いて外国人を安い労働力とみなして日本人と同等の賃金を払わないという事は法律で禁じられています。そのため、「外国人は安く使える」という事はあってはならないことなのです。
彼らが古い服を着ていたり、自分の身なりにお金をかけていなさそうに見えたりする背景には、きちんとした賃金をもらっていないということではなく、家族のために一生懸命貯金をしているのかもしれません。しかし、その人たちの社会的な問題を考えることなく、「外国人労働力は安く使えるから」と単純に考えてしまうことこそ、日本が抱えている問題なのかもしれません。
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