中国での職探しと就労ビザの実情(後編)

前編では、北京にある外資系の企業で内定を獲得したという話をしました。今回はその続きで、その後の就労ビザの手続きについて紹介したいと思います。結論から言うと、私は就労ビザを取ることができませんでした。

採用通知書への署名

 書面での確認は必須

転職エージェントの人を通して電話で内定通知をいただいたものの、やはり採用通知書に署名をしないことには就労ビザの手続きに移るわけにはいきません。いかなる場合でも書面での証拠は必要です。内定をいただいたのは12月上旬でしたが、就労ビザの手続きをするためにどうしても日本に帰る必要があったため、年末年始で官公庁等が休みになることを考慮し、年内に必要書類の申請をするために、転職エージェントの人にも「◯日までには採用通知書に署名をさせてほしい」とお願いをしていました。中国は旧正月を重んじる国ですから、「年末年始は官公庁が閉まる」ということを理解してもらうのにも少し苦労をしました。

 人事担当者の名称がわからない

採用通知書が完成するまでには時間がかかったようですが、数日後に企業のオフィスまで採用通知書へ署名をしに行きました。オフィスの玄関には、IDカードがなければ入れないゲートがあり、そこには総合受付があるのでそこで担当者を呼んでもらい、中に入れてもらうシステムになっています。エージェントの人から「人事課の担当者に会いに行って下さい」と言われて出かけたのですが、担当者の名前までは分からないと言われました。そこで総合案内でその旨を伝えたところ、ものすごく怪訝そうな顔をされ、「担当者の名前も知らないんですか?」「人事課の人と言われても分かりませんから、お繋ぎできません」と言われました。「人事課に電話1本入れれば、担当者くらい調べられるだろう!」と思ってしまったのですが、正直、一般的に中国では問題解決能力は期待できません。

 不安を抱えながらの署名

なんとか人事課の担当者を呼び出してもらいましたが、正直、彼女の英語はよくわからないところが多く、ちょっと不安になりました。採用通知書には私の名前が3か所に渡って書かれていたのですが、名字のスペルが間違っており、指摘をしたら1か所訂正されて新しいものを渡され、2つ目を指摘したらまたそこだけ訂正されて渡され… という状態でした。採用通知書を読みながら面白いと思ったところは、交通費が出ないところです。そのかわり昼食代として200元(約3,200円)が提供されていました。
なんとなく不安を抱えながらも採用通知書に署名をし、就労ビザ取得に向けて準備を始めました。

中国の居留許可証を取る手続きは複雑~外国人体格審査、臨時宿泊登記、労働許可証・・・

2017.07.16

健康診断を受けるようにとの指示

 診断項目はどうする?

その後、採用通知書に署名をしたときにお世話になった人事課の担当者から、入社前に健康診断を受けるようにと連絡がありました。ただ、日本でも同じですが入社前の健康診断には項目があります。連絡をもらったその日は時間があったので、中日友好医院に出かけて健康診断について話を聞いたのですが、やはり「企業からどの項目が必要か確認してきた方が良い」とのことでした。

 1を聞いても、0.5しか返ってこない

人事課の担当者に必要項目を確認したところ、「病院に行けば医者が知っている」と言われたため、中日友好医院で言われたことを話したところ、やっと教えてもらうことができました。さらに、病院の指定はあるかどうかと確認したら、北京市内での病院で健康診断を受けるようにと… このような、1を聞いたら0.5から0.8くらい、運が良ければやっと1を答えてもらえるという時間のかかるやり取りは中国では非常に多く、更にまた入社後が不安になりました。中国で仕事をしている夫に、一体どうやってこれに対応しているのかと本気で聞いてしまったほどです。

 2転、3転は当たり前・・・

日本で書類を揃えて北京に戻ってから健康診断を受けようと思い、北京大学病院に予約を入れておきました。しかし日本に戻っている間に転職エージェントの担当者から「企業から健康診断を受ける場所の指定が来ている」と連絡を受け、「この前とは話が違う!」とさらに不安になったことを覚えています。
ちなみに2月には旧正月があり、私たちは旧正月直前に中国に戻る予定でした。そのため、健康診断の予約を入れるにも、病院が休みではないことを確認する必要がありました。自力で頑張らず、中国の友人にお願いして代わりにやってもらえば良かったのですが、こちらは医師も看護士も英語が話せないことが多いため、最初に電話をした病院では「旧正月の間、いつ病院が休みかなんて知らない」と言われ、次に電話をした病院は内線が繋がらず、次に電話をした病院では「英語が話せる人はいますか?」と聞いたら「いません」と即答され、反応に困りました。北京大学病院に予約を入れるまで、3時間ほどかかったと思います。

 就労ビザ取得のための条件が厳しい

実は、転職エージェントの人と初めて打ち合わせをした時から、私の就労ビザの取得はもしかしたら難しいかもしれないと言われていました。
なぜならば、北京の就労ビザ取得のためには2年間の社会人経験が求められ、北京市内で働く業務内容と関連した職歴があるということが条件だったからです(ちなみに中国では都市によって求められるビザ要件が若干異なります)。私が内定を取ったのは12月でしたが、その年の3月まで大学院の学生でした。確かに学生時代は非常勤講師もしていましたし、学生非常勤教務助手として大学でも働いていましたが、それらの仕事が社会人経験かと言われると、少し微妙です。

 就労ビザを取得するために必要な書類

それでも内定をいただき、採用通知書に署名をした以上は、ビザが取れないかもしれないリスクを抱えてでも、就労ビザの取得に向けて書類を集めなければなりませんでした。
必要だった書類は、大学の卒業証明書と大学院の修了証明書、今まで働いていた場所(私の場合は中学、高校、大学)の退職証明書、警察からの犯罪経歴証明書でした。まず、中国で就労するためには大卒以上である必要があります。そのために大学以上の卒業証明書、それから学位記の原本が必要でした。また、2年以上働いていた経験があるという証明のために退職証明書が必要でした。さらに、今まで罪を犯したことがないという証明のために、本籍がある警察署本部に行き、犯罪がない証明を出してもらう必要がありました。
特にこの犯罪経歴証明書は非常に厄介で、外務省にて「これは確かに国が発行したものである」という証明をもらう必要があったのです。中国はハーグ条約に加盟していないため、外務省では「公印」という証明をもらい、それから中国大使館にて「認証」という証明をもらう必要がありました。

 費用も時間もかかる・・・

日本には1ヵ月ほど帰りましたが、限られた時間の中で書類の準備をするため、多少お金はかかりますが、外務省に書類を持参しようと考えました。東京都の外務省だけではなく、大阪にも外務省分館があり、そこで証明がもらえるということがわかり、私の本籍地は東京よりも大阪に近いので、大阪に行くことにしました。そして公印を受けた書類を中国領事館に持参し、そこで認証をもらいました。

なぜ台湾人は日本人のことが好きなのか?

2017.03.22

健康診断を受けてみて

 中国に戻って受けた健康診断

企業から健康診断を受ける場所の指定が来たと述べましたが、それは外国人がビザを取得するために健康診断を受けるための場所でした。どれだけ調べても予約制と言う事は書かれていなかったため、朝から行って健康診断を受けました。

 雑だけど早い診断

健康診断は大きなフロアにレントゲン室、心電図室、耳鼻科検診室などがあり、空いているところにどんどん行って検査を受けるというものでした。私は中国に来る際に必要な健康診断は日本で受けたのですが、日本では3時間ほどかかった記憶があります。中国では45分で全ての項目が終わりました。胸部レントゲンではネックレスや下着を外す指示はなく、さらに聴力検査は視力検査の後に行われており、視力検査で医師と会話をしている様子が見て取れた聴力検査は問題ないと記載されるなど、なんとなく雑な検診でした。
5日後には検査結果が証明書として発行されました。日本で受けた時は30,000円強かかった健康診断ですが、中国では600元(約9,600円)で済みました。

カナダのインターンで考えたこと!海外企業で働くことは”楽”なのか?

2017.03.31

就労ビザの取得ができない!

 やっぱり・・・

就労ビザに関しては、企業と転職エージェント、そしてビザ代行会社が連携していましたが、最終的には就労ビザは取れないという結果に終わりました。業務内容と職務経験が関連していないから就労ビザの取得は不可能であると、中国の公安から言われたそうです。
転職エージェントの担当者も、企業に一生懸命交渉し、別の代理店を使う提案をし、何とか他の方法はないかと探してくれたのですが、うまくはいきませんでした。

 次のチャンスがある

もちろん最初はものすごくショックでしたし、書類を集めるためにかけたお金ももったいなく感じて、しばらく落ち込みました。転職エージェントの担当者は、「今回集めた書類は半年有効だから、無駄にならないように新しい職を探しましょう」と言ってくれましたが、その仕事がやりたいと思ったから応募して内定を取ったものなので、今更他の仕事を探す気にもなれませんでした。
今回は残念な結果になってしまいましたが、また縁があれば、中国で仕事をしたいなと感じています。

中国での就労ビザ取得は簡単ではない

就労ビザは、外国人にとっては大きなハードルだと思います。特に今は国民の職が奪われることを恐れ、外国人に就労ビザを出したがらない国も少なくはありません。米国のトランプ大統領も移民を制限しようとしていますし・・・

 申請してみなければわからない中国の審査

もしかすると事前に就労ビザの取得可否を確認すればよかったのに、と思う読者がいるかもしれませんが、中国のビザ取得は公安に書類を提出しなければどうなるのかが分からないという難しさがあります。出してみないと本当に分からないそうです。
中国はただでさえ人口が多いので、外国人が就労ビザを取得することは簡単ではないでしょう。能力を企業に認めてもらったにもかかわらず、就労ビザが取れないがゆえに仕事ができないなんて非常にもったいないことだと感じましたが、良い経験になりました。この記事が少しでもあなたの助けになってくれればいいなと思っています!

中東での会社設立は簡単ではない!ラマダンなど文化が全然違う!

2017.08.21
   

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA