毎日が快適に眠れること、毎日が快適に起きれること、ただそれだけのことなのに、それが叶わなかった1日があります。それが、モロッコの砂漠のど真ん中で1泊した時です。それを体験するまでは、砂漠で1泊過ごすなんて素敵!とウキウキしていたのですが、実際に行ってみると色々と想像とは異なる体験ができたのでご紹介しようと思います。
砂漠の宿泊所に着くまで
旅立ちへの準備
私が目指したのは、メルズーガ砂丘というモロッコの東、アルジェリアとの国境付近の砂漠です。車でモロッコを一周していたのですが、砂漠へ向かう前にツアーの集合場所へ到着すると、立派な、でも砂漠にぴったりの雰囲気のホテルがそこに整然と建っていました。そこからラクダに乗って1時間半かけて砂漠の宿泊所まで向かいます。トイレなどの用を済ませて、必要最低限なものだけをリュックに詰めます。日照りが強く、もちろん砂漠なので太陽を遮るものがないため、頭の周りにスカーフをぐるぐる。サングラスは景色の色が変わるので普段旅行ではあまりかけないのですが、前を見ていられないくらいに直接光が当たるので、この時ばかりは装着。いかにも砂漠を何日も何日も旅する砂漠人のように。まずは格好から入るのも、旅を数倍楽しむアイテムの一つと思い、ディズニーのアラジンのような格好をして準備完了です。
旅の仲間
一緒に旅をするのは多国籍の旅人たち約15人。日本人も何人かいました。人間だけではなく、ラクダさんたちもスタンバイ。これが近くで見るとめちゃくちゃ可愛い!ラクダにこんなに癒されると思いませんでしたが、彼らののほほんとした顔を見ていると、「人生焦るな」と言われているようで、なんか小さいことを気にしていた日常が馬鹿バカしく思えてきました。自分が乗るラクダを紹介されたので、数枚一緒に写真を撮ったあと、いざラクダライドスタートです。
ラクダの乗り心地
まず立ち上がりが物凄いダイナミック!馬とは違い、ラクダが座った状態で私が背中に乗り、その後ラクダが立つので前につんのめりそうになるのです。でもそれが癖になるくらい面白い。そしてラクダの歩き方も馬とは少し違って、馬みたいにパカパカスムーズにはいかないんですね。砂漠の上を巨体が歩くので無理はありません。2つのこぶの真ん中に座っていましたが、そのこぶに挟まれて地震でも起きているかのようにユラユラ、1時間半。最初は、だだっ広い果てしない砂漠地帯をラクダと一緒に闊歩することはめちゃくちゃ新鮮で、楽しかったのでキャッキャしていましたが、1時間も経つとお尻や腰は痛いわ、ずっと同じ景色だわ、何日もラクダを旅をする本物の旅人を尊敬しました。
宿泊所での時間
キャンプサイトでの設備
やっと砂漠のど真ん中の宿泊所に到着すると、そこには見たからにツアー用に造られたキャンプサイトがありました。でもデコレーションは砂漠らしくて、ヒッピーになったような気分。いわゆるインスタ映えしそうな場所です。ガイドさんが色々と設備の説明をしてくれたのですが、キャンプサイトの可愛い見た目からは想像できないほどの設備しかありませんでした。まず、寝床。部屋は一応何個かあって、部屋と言っても布で仕切ってあるだけの簡易的な部屋。でも一応プライベートはある感じ。家族3人で行ったので、私たちは1部屋3人で利用することができました。そして水。ちょっとしたタンクにある限られた水のみ。水道が引かれているわけではもちろんないので、無駄に使用しないよう注意を受けます。シャワーはもちろん浴びることができません。水洗トイレもあるわけがありません。でもそこは砂漠地帯。そのあたり全体がトイレです。夜は動物が来ると危ないので、あまり遠くへ行かないように注意を受けます。夕食に関しては、それなりに美味しかったです。資源が限られた中で作ったものにしては上出来。一般的なレストランで食べるような、モロッコの伝統料理です。もちろんエンターテイメントもあるわけではないので、一緒に旅した人たちと談笑をしながら素敵な砂漠の夜を楽しみます。
夜に見たもの
夜になると驚いたのが、星の数です。周りに一切の光がない中で見る星空は、純粋に綺麗なもので、本来空はこんなに綺麗なものだったんだと改めて自然に魅せられました。しかし、寝床につくと、それはテントの中とは言え外と同じようなものなので、砂がその辺に普通にあるんですよね。砂って本当に厄介なものです。カバンの中、靴の中、服の中、寝ている最中、いつでもどこでもプレゼンスを発揮してくるんですよ。これほど、家のベッドで普通に眠ることが恋しくなったことはないというほどです。
出発の朝
朝になると、自然に光がテントの中に差し込んできます。日が沈めば、眠りについて、日が上がれば、起きる。シャワーを浴びていないことに加え、砂の襲撃があり、さらにすでに朝から暑さが込み上げてくるのを感じましたが、この自然のサイクルを感じながら起きられたことはとても良い気分だったことを覚えています。朝食を食べて、またラクダに乗って元の場所へ帰る準備です。熟睡しなかった私に比べて、ラクダを見ると昨日と同じくのほほんとした顔。こんな砂漠でテントもなく寝泊まりして、砂にも負けずラクダは強い。私もラクダになりたいと思った瞬間です。
帰りのラクダに揺られて
またラクダに揺られる
帰りは行きと同じルート?か砂漠なのでよくわかりませんが、来た時と同じラクダに乗って帰ります。行きとは違い、帰りはすでにラクダの乗り方にも慣れてすでに新鮮さがなくなったような気がしましたが、それでもラクダ乗りは楽しかったですね。154cmしか身長がない私が、こうやって高いところから何時間も辺りを見渡すことができるのですから。そして、1時間半のライドが終わり、ラクダにお別れを告げます。もう会うことがないかと思うと、3時間私のために猛暑の砂漠を歩いてくれて、ありがとうという気持ちでいっぱいになりました。
砂漠から帰ってきて気が付いたこと
ホテルのシャワー付きトイレに直行!ここで浴びたシャワーがどれだけ気持ちの良かったことか。。。さらには、砂ではなくコンクリートの上を歩くことがどれだけ楽なことか。砂が目に入ることもなければ、トイレもシャワーも心配することがない。現代に生まれ育ってしまって何の不自由なく生きてきた私には、もうこのような自然との生活は難しいような気がしてなんだか悔しい気持ちになりました。
砂漠生活が教えてくれたのは
砂漠での生活は、色々なことを教えてくれた気がします。今の生活がどれだけ恵まれたものなのか、そして、水や食べ物、トイレやシャワー、基本的なものがないと何もできないことに気が付いて人間はなんて弱いんだろうと実感しました。昔は人間も自然と共に生活していたのに、いつから適応できなくなってしまったのか。この機会があって、素敵なラクダと旅ができたこと、自然と生きることは何かを学び、一生モノの体験ができたと思っています。みなさんもぜひ体験してみてください。
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