オーストラリアと日本の教育には、大きく分けて3つの違いがあります。まず、システム、生徒の姿勢と質、そして環境です。年齢と学年別の特徴、そしてそれらの問題を把握した上で、オーストラリアの教育の流れが高等教育以降にどのように変化するか、その中で日本人がオーストラリアで学ぶためには何が必要かなどを説明します。
小学校から高校
自由を重んじる風潮
オーストラリアの初等教育と中等教育においては、規律や校則よりも自由を重んじる風潮があります。そのため、「静かに先生の話を聞く」ということが重視されていないということもあり、どの教室も賑やかです。
学校の履修科目も日本以上に自由な傾向があり、キリスト教系の学校では、理科の授業が聖書の授業として扱われるケースもあります。そのため、理系の子どもは授業に遅れを取ってしまうということもあり得るようです。
また、オーストラリアの学校はランチタイム以外にもおやつタイムがあります。持参するお弁当の中身はサンドイッチと果物、そしてスナックバー1本ということもあり、日本のようなお弁当やデザートとは違います。また、家庭環境によっては何も持って来られなかったり、ご両親がお弁当を作るという時間がなったりという場合もあるようで、小さなツナ缶1個がランチバックに入っているという生徒もいます。朝ご飯を食べてこない、おやつやお弁当を持って来ないという子どもが増えつつあるということは、オーストラリアの社会問題として認識されつつあります。
私の経験ですが、私立小学校の教師の中にはオーストラリアに来たばかりの日本人生徒に英語の個人レッスンを行い、現金を受け取っている人もいました。プライベートとは言え、公私の事実になっており、驚いたことを覚えています。
両親の悩み
そんな自由な風潮ですが、13歳より上の年齢の子どもを持つ両親の深刻な悩みとして、子供のドラッグ使用が挙げられます。アメリカだとドラッグと聞くと下級階級や上流階級の問題といったイメージを持つことがありますが、オーストラリアではどの階級の過程でもあり得る問題であり、ちょうど13歳ごろから子どもたちがドラッグに興味を持ち始めます。
オーストラリアのドラッグの浸透は深刻なので、両親たちは自分の子どもの交友関係を把握しようと努力をし、学校からもドラッグには十分気を付けるように求められます。
義務教育は6歳から16歳まで
初等・中等教育制度
日本の場合は小学校が6年間、中学校が3年間、高校が3年間ですが、オーストラリアには小学校が6年間(Year 1からYear 6)、中学校が4年間(Year 7からYear 10)、そして高校が2年間(Year 11からYear 12)あります。中学校を修了するYear 10は日本で言う高校1年生となりますが、オーストラリアでは中学校を修了すると就職するか、進学するかを選択しなければなりません。
オーストラリアでは、中学はセカンダリー・スクールと言われ、高校はシニアセカンダリー・スクールと言われます。学校の勉強についていけない、家庭の事情により進学できないなどという理由を持つ子どもたちは高校に進まず、就職という道を選ぶため、高校からは生徒の数が一気に減少するのです。
高等教育に向けて
高校を卒業するYear 12を終えた後、子どもたちは公立職業専門学校というTAFEに通ったり、或いは大学進学のコースに分かれて大学進学を目指したりします。TAFEには海外からの留学生も通うことがありますが、全体の9割はオーストラリアの学生たちです。
大学進学を目指す場合、Year 12で州の統一試験があるため、その成績と高校の成績を通し、希望大学の入学合否が決定されます。オーストラリアの大学は、入学してからが大変と言われており、相当勉強しなくては卒業できません。日本の大学は入学は大変だけれど卒業は簡単と言われているため、日本とは逆かもしれませんね。
学校における日本との違い
このような背景から、オーストラリアの学生たちは授業において、答えに自信がなくても手を挙げて発言しますし、間違っていても気にしません。日本人は比較的、間違いを恐れ、自信がない時は発言しないという傾向がありますから、日本人がオーストラリアの学校に留学に行くとその積極性に驚かされることも少なくはありません。また、クラスには人種や民族が異なる子どもたちが集まっていることも多く、それぞれが互いの特徴を尊重しながら生活しています。
加えて、オーストラリアの学校では多数決をあまり取りません。学校側が決定し、生徒には決定事項が伝えられることが多い、という点も、日本とは違う点です。
オーストラリアで仕事をしたい!
大学に進学を希望する場合
日本と同じく、オーストラリアでも、就職の際には資格や免許が重要視される傾向があります。もしも日本人を含む外国人がオーストラリアで就職したいと考えた場合、例えば高校を卒業した後にオーストラリアの大学に進学したい人は、大学準備コースか、大学1年次に相当する専門課程コースに入って、大学の入学条件の必須科目や、選択科目を履修する必要があります。
または日本の短大を卒業した後や、日本で仕事をしながら海外で勉強をしたいと思った人に人気のあるコースがELICOS(English Language Intensive Courses for Overseas Student)です。コース終了後にIELTSの試験を受け、5.0~6.0ポイント以上であれば一般的に大学レベルの英語力があるとみなされます。
大学の様子
どこの国でも、大学では一定の期間に単位を取得する必要がありますよね。オーストラリアの大学では、最終試験に2回以上合格できなければその科目は選択出来なくなりますし、年間約250万円は掛かる授業料が無駄になってしまうので、最終試験に臨む生徒には鬼気迫るものがあります。西オーストラリアの大学で、コンピューターサイエンスを教えている知人男性は、単位が足りない女子生徒に色仕掛けをされた経験もあるとのことでした。もちろんプロとしてそんな誘いに乗るわけにはいきませんが、おそらくそんな経験を持つのは彼ばかりではないでしょう。
日本の場合は外国人が日本の大学に通ったり、日本で就職しようとしたりしてもこのようなシステム自体が存在しません。その一方でオーストラリアでは外国人にとっても大学進学や就職がより容易に感じます。しかしその一方で大学卒業は難しく、ここでどれだけ本気で勉強をするか、ということがその後の仕事に向き合う姿勢に繋がっていると感じることもあります。日本の教育と受験のシステムは、小中高で勉強のピークがあり、大学入学後は出席日数と卒論を意識するのみで羽を伸ばしがちですが、オーストラリアの勉強ピークは就職直前です。
日本人は負けてない!
オーストラリアに限ったことではありませんが、海外の大学や専門学校では、中国人、インド人と日本人は頭が良く、特に数学が得意だと思われているケースもあります。そしてもっと国際社会で活躍する日本人が多くてもいいはずだと言う人も少なくありません。アジア人は勉強ができるという考え方には偏見もありますので何とも言えませんが、日本人のことをそう言ってくれる国があるということは嬉しいことですよね。日本人も自信を持って、国際社会に貢献していきたいものです。
コメントを残す