オーストラリアで仕事をする、または事業を展開する日本人は年々増えています。しかしその過程には思うようにいかないこと、または失敗することもあるのではないでしょうか?18年間オーストラリアに住み、仕事をしてきた経験から、オージー(オーストラリア人)の傾向やビジネスに役立つコツ、または留意点などを、実際の例を挙げて紹介します。
英語が話せるか、どの程度話せるか
英会話スキルによって、オージーの態度は大きく変化します。私がオーストラリアで10年間働いていた会社には、私の他に2人の日本人の女性が働いていました。その内の1人のAさんは文法の基礎がしっかりしていて、読み書きも一番正確でしたが、最初に辞めてしまいました。辞めた理由は仕事上の失敗や自己都合ではなく、オフィスの人間関係です。実は、Aさんはスピーキングが得意ではありませんでした。
文法力よりも会話力
Aさんからすると、オージーの何倍も仕事が出来て、礼儀正しい、自分は会社に貢献こそすれ、何も悪い事はしていない、となるわけですが、オージーの考え方は違います。特に職場に車で通勤してくる人の多い職場では、仕事帰りに一緒に一杯やる機会もないので、コミュニケーションを取るのは仕事場に限られます。
私の経験上、女性の場合は手を休めてでも同僚との会話に加わり、自分の意見を言える程度の会話力を持っていると、かなりプラスになります。私はこれまでアメリカ、イギリス、日本のオフィスで仕事をしましたが、“Out of work conversation(仕事以外の会話)”が仕事に影響するのは何と言ってもオーストラリアでした。
お客さんとも会話が大切
また、仕事仲間だけでなく、オージーの業者にも同じことが言えます。英語が話せないと、値段や期日、仕事の質にも影響が出てしまいます。これは断言できます。
“No Worries!(問題ないよ)‟を真に受けない!
「問題ないよ」と気前よく請け負う、太鼓判を押す、オージーらしいセリフですが、これはほぼ挨拶代りに連発されるので、あまり鵜呑みにしない方がいいです。オージーに仕事を任せた場合、進捗状況は彼らの言葉からではなく、目で確認します。「出来そうな気がする」と「出来る」は天と地の差がありますが、オージーはどちらも“No worries”で答えます。ギリギリになって「出来そうな気がしたんだけど」とならないよう、チェックすることが必要です。
こんな日本人の老夫婦もいた・・・
“No worries”に惑わされた一例に、ご主人の定年を機にオーストラリアに移住してこられた日本人夫婦のケースを紹介しましょう。彼らはビジネスビザを取得し、高級エミューオイルを日本のスポーツ競技団体に輸出販売する事業を始めました。
きっかけは、毎年パースを訪れて、ゴルフを楽しんでいた頃、ゴルフ場で知り合い、意気投合したオージーに持ち掛けられたことでした。ご主人は「設備投資にお金は掛かったけど、現地のスペシャリスト、オージーが顧問兼、共同経営だから、軌道に乗ればすぐ利益が上がる」と言っていました。英語をあまり話せないご夫婦で、ピュア・エミューオイルの仕入れ先の選定、税関などの書類もそのオージーに任せていたそうです。残念ながら、1年ちょっとで倒産しました。
実際はNo Worriesではなかった
ビジネス失敗の理由は、純度が高いはずのエミューオイルに異物がたくさん入っていて、販売先からクレームが付いたからです。返品が続いた時、ご主人が何度も共同経営のオージーにどうなっているのか聞いても答えは常に“No worries”でした。
共同経営と言っても、結局出資の担当をして、その他を任せっきりにしたのが良くなかったのでしょう。
バレなければ悪いことではないという意識
私の主観ですが、多くのオージーは、バレなければ悪いことではないという考えを持っている人が多いと思います。ささやかな、悪戯程度のものであれば、そう目くじらを立てることもなく、国民性で片付きますが、ビジネスにおいては十分気を付けなくてはいけません。
勝手に他人の物を使う
オフィスなどでは、他人の机の上に置いているものを勝手に借りるのは息を吸うくらい普通の感覚で行われます。また、何人ものオージーとの共同生活をした友人の話では、冷蔵庫に置いてあるものは、大きく名前を書いてもすぐに無くなるそうです。その代わり、当人たちが他の人に同じことをされてもそれほど怒らないと言っていました。
これは、彼らの根底にある“Mate意識(みんな友達!)”の表れなのかわかりませんが、日本人には理解し難い現象です。
やっぱり現地で仕事をするならオージーが必要
オーストラリアでビジネスをする場合、彼らの個人主義とMate感覚、このバランスをどこまで理解できるかが大きなポイントになると言えるでしょう。また、オーストラリアで事業をしているアジア圏の人々の合言葉に “100人のアジア人より、1人のOZスーパーバイザー”があります。
大事な交渉にあたる際は、信頼できるオージーを1人仲介にするといいという意味で、人選を慎重に行えば、これ以上強力なパートナーはいないのです。
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