色々な国籍の人々が来る島でレストランを経営するのは正直簡単ではありません。同じ人間とはいえ、やはり食べ慣れているものが違うのだから、おいしいと感じるものも人それぞれ。イタリア人シェフがいてイタリアではこう、と言ってもなかなか伝わらないことが多いのが毎日の葛藤です。
カナダ人おじちゃん
タイのビジネスの厳しさ
今タイでのビジネスが厳しくなって、タイ人を雇わずにはレストランを営業できなくなっています。法律上は外国人一人につき、タイ人4人を雇わなければなりませんが、私のように自営業で小さくビジネスをしている外国人にとっては、さすがに難しい数字です。よって、パンガン島でちゃんと4人以上雇っている外国人オーナーはほぼいません。さらにパンガン島でタイ人を雇おうとしても、なかなか続かなかったり、仕事があまりにできなさすぎるので、固定で雇えるタイ人はほぼいないという前提でビジネスしなければなりません。
タイ人会計のルール
タイ警察もさすがに外国人一人あたり4人のタイ人というのは難しいのをわかっているのですが、最近特に厳しく取り締まりだしたのが、会計はタイ人がしなければならないということです。私はイタリア人のビジネスパートナーがいますが、忙しくない時期には、二人でも営業できるはずなのに、現在雇っているタイ人女の子が実家に帰ったり、病気になるだけで、レストランをオープンできないのです。その結果、定休日でもないのに頻繁にレストランを閉めることになりました。もし、タイ人なしでオープンした場合に警察が来たら、高額の罰金を課せられることになるので、悔しくも黙って閉めるしかありません。そういった状況を知らない一般のお客さんの中で、優しく声をかけてくれる人もいれば、怒るお客さんもいます。
怒るお客
常連さんが結構いて、頻繁に来てくれるのですが、その中の一人カナダ人のおじちゃん(自称パイロットだったらしいし、カフェも経営したことがあるらしい)はいつもオープンする八時半にはきっかり来て、同じようにアメリカーノを頼みます。そんな彼にある日道端で会って、”why you close your cafe so often and randamly? it is frustrating that i drive all the way here and you are closed.” と朝から怒られたのです。その後数時間して、レストランのフェイスブックにもメッセージをしてきて、同じような内容を書いてきました。こっちは開けたくても開けられない事情があるのに、理由も知らずに怒られても、とものすごく嫌な気分になりました。でもそこはグッとこらえて、とても丁寧に理由を添えて謝り、これからは定休日以外に閉める際はフェイスブックに必ずポストするようにします、と告げました。常連ですし、友人も何人か連れてくるので、ここは謝って事を静かに済ませるようにしました。もちろん、大きなカフェやレストランは、何人もスタッフがいて、一人欠けてもお店を開けるか閉めるかなんて問題にならないと思いますが、こんな厳しい状況で小さくがんばっている私達のことをちょっとは理解してほしいな、なんて文句が出てしまいます。しかもこんなタイの南の島で、東京のど真ん中のお店でもないのに、時間に厳しいとなんだか息苦しく感じてしまうのも、この島の雰囲気があるからでしょう。
国籍による傾向
ロシア人
オープンして7ヶ月経ったところで、どの国籍人がどの料理を頼むのか大きな傾向があることがわかりました。レストランに到着した時点で大体の注文内容が想像できるのです。お客さんの半分以上を占めるのがロシア人で、アジア人と同じくシーフードがお好き。なので、あさりのパスタだったり、お魚のフィレのお料理を頼むのはほぼ間違いありません。
イスラエル人
また、ロシア人と同じくらい多いのがイスラエル人で、彼らの70%がメニューになくてもクリームを頼みます。例えば、本場イタリアではカルボナーラにクリームは絶対に入れないものが、日本でもそうですが、クリーミィなパスタに仕上げるために、たっぷりクリームを入れカルボナーラといえば、白色、というイメージがある人が多い。イスラエル人はどんなパスタにもこのクリーミィさを必要としてきます。リクエストがあれば作りますが、メニューにあるものではないので、正直とくにおいしいものでもありません。でも聞かれたら、作る、をトライしています。また、イスラエル人の家族が来たら、子供用に何も味付けしないパスタとトマトソースを別のお皿に分けて出してほしいという注文が多いのも特徴です。今はまた来た来たこの注文、という目配りでキッチンに注文を託しています。
忍耐力と精神力
自営業の良くも悪くもあるところが、いつでもオープンできるし、クローズできるところです。精神的に参ったとき、もう体が動かない、と思ったときに諦めようと思えば簡単に諦められる。でもそこで、強い精神があって、明日は明日また頑張る、と思えるようになれば、どんなお客さん相手でも自分は自分、と強くいることで毎日続けていけることができるでしょう。
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