私は今、タイの大学で教えています。かつて日本の大学でも教えていたことがあり、私自身も学生のときには日本とタイの両方の大学に通いました。ここでは、私から見た学生同士の関係、学生と教員との距離、そして卒業後の進路について気づいた点をお話ししたいと思います。
学生同士の関係について
親交の深め方
学生同士は日本と同じく、授業やクラブ、サークルで仲良くなるようです。やはり共通点があると仲良くなりやすいですよね。
また、難関と言われる大学に行けば行くほど、特に文系では女子学生の比率が高くなる傾向にあります。
幼さが残る学部生
学部生は制服の着用が義務付けられています。そのため日本の大学生よりも学生っぽさと言いましょうか、子供っぽさが残っている印象があります。
全体的に日本の学生よりもいつも一緒にいるといったイメージがあります。特に女子学生は手をつないで何をするにも一緒なようで、そのような習慣のない日本から来た私にしてみると少々気味が悪いくらいです。制服を着ているということもあり、特に大学1年生はなんだか高校生のような感じです。
学生と教員との距離
教員はとても尊敬される
学生と教員との距離ですが、教員の立場からすると日本の方が近しい感じがします。こちらでは、教員はアジャンと言ってとても尊敬され、どこでも手を合わせる挨拶、「ワイ」をされます。
授業中も極めて先生のいうことを素直に聞く傾向があり、常に教員に対する敬意を示すことを忘れません。言い換えれば、教員側が間違ったことを言ってしまっても、学生たちは遠慮してなかなかそれを指摘してくれません。とても真剣に授業を受け、悪い言い方をすれば言われたことを全て鵜呑みにするといった感じがします。
日本で私が教えていた時はそこまで尊敬された記憶はありません。良い言い方をすれば正直に接してくる感じがしましたけれど、授業に対する熱意も日本の学生は正直低かったような気がしています。
どちらが良い?
とは言え、どちらが良いというわけではなく、どっちもどっちという感じがします。タイの学生にはもっと正直に気さくに接してほしいし、もっと色々と聞いてほしいです。
一方、日本の学生には全体的にもっと素直に学んで欲しい、教員の立ち位置をもう少し認識してほしい、一言で言えばもっと尊敬してほしい、と感じています。最近、日本の大学で教えている友人から「最近の日本の大学の教員は学生が減る傾向もあり、サービス業以上に学生に気を遣わなければならなかったり、高校へリクルート活動などに行かなければいけなかったりする」と聞きました。なんとも大変な時代になったものです。
卒業後の進路
大学卒業後はエリートへの道をまっしぐら
タイは日本ほど大学の数がないため、エリートの大学に行けば行くほど、学部を卒業した後や学部生時代に日本を含めた海外留学し、後にいわゆる大企業、政府機関、大学などに勤めるという進路が典型的なパターンです。大学院の場合はさらに露骨な感じです。
私が大学院生だった時、42人の学生の中で38人が女性でした。私も含めた4人が男でしたが、私以外の男性は皆ものすごく優秀で、人間的にも尊敬できる人物でした。彼らは予想通り、今は政財界で活躍しています。
タイは基本的に男性中心社会ですが、一握りの男性が中心になり、政官財の中枢部にいるだけで彼らは頭の切れる女性に支えられているというイメージです。
38人の女性はおそらく、大企業や政府機関等に努め、そこそこ良い生活を送っているのではないでしょうか。タイ人は英語か日本語ができて学歴があれば、絶対に職には困らないと言われています。
給料は僧侶並み
ちなみに、大学の教員の給料はとても安いという現実があります。そのため私はよく日本人の友人から僧侶のようだとからかわれています。
実際に、タイの大学で教員をしている同僚は超がつく位のお金持ちの家の出がほとんどです。そのため、少ない給料については気にならないのではないかと感じています。
日本の社会が当たり前というわけではない
日本国内で大学に通い、生活をしていると、どうしても日本の社会が世界共通のように感じてしまうことがあります。正直、日本ではアルバイトやサークルに勤しみ、授業をサボりながら何とか単位を取る、という学生も少なくありません。しかし、一方日本の外に出ると大学を卒業するために一生懸命授業を受けるという学生は多いのです。
世界で通用する人材になるために、大学生には様々な社会を経験してほしいと思います。両国で教えることのある人間として、私自身も自分の経験を学生たちに伝えていきたいと思っています。
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