ホームステイのコーディネーターとして働いて分かった外国人と働くコツ

今まで、小中学生の短期ホームステイ・プログラムのコーディネーターとして、子どもたちの引率をしたことがあります。大学院生時代はアメリカの大学と提携してアメリカの学生を招き、合同プログラムを主催し、学生非常勤教務助手として国際学会のアシスタントをしたこともあります。海外の人と仕事をすると言うのは、その価値観等の違いなどからうまくいかないことが複数あります。今は英語圏ではない国に住んでいますが、こちらの研究者の方や大学関連の方と英語で話をしていると、価値観ではなく言語の問題から「?」と思うこともたくさんあります。ここではその理由と経験を踏まえ、海外の人と一緒に仕事をするコツを紹介したいと思います。

価値観が違う

 クレーム対応の違い

小中学生の短期ホームステイのコーディネーターをしていた時の話です。私が携わっていたプログラムは、2人のコーディネーターが30人ほどの小中学生(9歳から15歳)を連れて海外に行き、ホームステイ経験をさせるものでした。子どもたちは、午前中はスタディセンターと呼ばれる場所で現地のスタッフと共に英語を学び、午後はフィールドワーク(社会見学のようなもの)に参加します。私はオーストラリアとカナダのプログラムを担当していました。

ある時のフィールドワークでのことです。子どもたちの日程表には郵便局を訪問すると書かれていたのですが、30人もの子どもたちが一斉に郵便局を訪問すれば、さすがに先方の迷惑になる可能性が高いということで、その計画を断念し、郵便局訪問を飛ばすことになりました。しかし、日程表に書かれている予定をただキャンセルしてしまうと、日本の保護者から不安の声が上がる(クレームが入る)ことが多々あるため、私は現地のスタッフに事情を話し「代替案を考えてほしい」とお願いしたのです。しかし「そんなところでクレームを入れる方がおかしい」の一点張りで、最初は聞き入れてはもらえませんでした。 日本はクレームに対し、「その言い分はおかしいです」とは言えない国なのですが、海外ではそうでもないのです。

 何の為に働いているのか

しかしこの後、このプログラムは日本の子どもたちの為のものであるということを知って強調したところ、「確かに日本の子どもたちや保護者が満足できるプログラムにする必要がある」と納得していただき、その代わりに違う場所に連れて行っていただきました。これで子どもたちに「郵便局には大勢で行くと迷惑になってしまう可能性があるから、代わりにここに行くからね」と話をすることができました。このような対応は、「ただ予定をキャンセルした」というだけではなく、「迷惑がかかる可能性があるから訪問ができない」という、子どもへの教育の意味合いもあると思います。また、現地のスタッフが代替案を考えて他の場所を案内して下さったおかげで、子どもたちから不満が出る事はなく、有難かったです。人間が働く時にはつい自分の価値観を中心に考えてしまいますが、外国人同士が一緒に働く場合は、仕事の目的を考慮し、誰のための仕事なのかということを考えた上で、相手の価値観も受け入れながら柔軟に対応できなければいけません。仕事は決して、自分のためにしているものではないのです。

日本のビジネスマナーは世界共通ではない

 仕事のスピードの違い

大学院生時代に、アメリカの大学から学生たちを受け入れて合同プログラムを開催するため、日本の大学でチームに加わり、準備に参加した時の話です。この打ち合わせも大変でした。日本とアメリカでは時差があるため、多少の連絡の行き違いは仕方がないのですが、日本ならば質問等が来ればすぐに返信します。しかしアメリカのスタッフは質問をしてもなかなか返信がなく、やっと連絡が来たかと思えば全く違う内容の連絡が来たなどと言うことがあり、意思疎通がうまくいきませんでした。こちらがイライラしても仕方がないのですが、直前まで全然決まらないことも多く、大変でした。日本ならばこんな効率の悪いやり取りはまず無いですし、また、大切なメールを受け取れば「メールを受け取りました」と一報を入れることが一般的です。しかし国が違うと仕事への考え方も、優先順位も違ってきますので、この時には非常に苦労した覚えがあります。こればかりは、相手を適度に急かしながら、臨機応変に動くしかありません。

 残業と締め切りへの価値観の違い

仕事のスピードに関連してお話をするならば、残業にも価値観の違いが存在します。日本では残業は当たり前です。むしろ残業しなければ収入が減ると考えている人も多いでしょう。しかし海外の場合は残業と言うのは「業務時間内に仕事終わることができなかった人がやるもの」と言う印象があります。そのため、就業時間を過ぎても仕事をしようと思う人が少ないようです。また、「日本人は働き過ぎ」と思っている外国人も多いですので、日本の仕事量を外国人にやらせようとするのはなかなか困難なものがあります。外国人と一緒に働く場合は就業時間をしっかり確認し、残業についての価値観も一致させておかなければいけません。また、海外には時差の概念がない場合があります。こちらが「締め切りは〇日の〇時」といっても、人間は時間をどうしても自分の国を基準に考えるため、本来の締め切りを守ってもらえない場合があるのです。国際学会を主催するために海外の研究者から院生から申し込みを受け付けていた時、締め切りを設定したにも関わらず、自分の国の時間を基盤に考える人が多く、締め切りが守られないことが多くありました。日本は世界の中でも日付変更線に近いため、日本の時間では締め切りが過ぎても世界の多くの国ではまだ締め切りに1日ある、ということになってしまうのです。締め切り等を設定する場合は、どこの国の時間が基準なのかと言うことを明確にしておかなければいけません。実際にこの学会でも「日本の時間で〇日〇時まで」と記載するようにしたら、多くの人が締め切りを守るようになりました。

母国語が英語ではない人と働く際の注意事項

 言語の違い

英語を母国語としない人と一緒に英語を使って仕事をするのもなかなか大変です。と言うのは、英語のニュアンスがネイティブとは違ってくることがあるからです。例えば”maybe”とは「おそらく」と言う意味ですが、英語圏における”maybe”は、「可能性は極めて低いけれど(一般的に20%-30%)おそらく」という意味があります。しかし外国人がこの単語を使う場合、可能性は無視されて、「多分」「きっと」「おそらく」「私はこう思う」などが全てこの”maybe”で表現されてしまうのです。そのため、「さっきこう言ったじゃないか!」という誤解が生じてしまい、なかなか仕事の予測を立てることができません。ネイティブではないから仕方がないと言えば仕方がないのですが、仕事をする以上は誤解があってはいけませんので、分からないことなどは遠慮なく相手に聞かなければいけません。

 諦めも肝心

相手の言い分よく分からないとは言え、ずっと質問をし続ける必要がない場合もあります。以前、中国の外資系企業で働く人に「日本は就業時間のだいたい1時間前には職場に行くけれど、中国はどうなのか」と聞いたら、「それは、日本が(時差のために)中国よりも1時間早いから1時間前に行くのよ」と即答されたことがあります。思わず「は?」と言いたくなるような返答であり、私の質問の答えにはならないのですが、別に大切な質問ではないので追求はしませんでした。このように、諦めは非常に肝心です。もしも絶対に聞いておかなければならないことならば、どれだけ言語の障壁があっても確認をしなければなりません。しかし、雑談に近いような話であれば、「よく分からない」「まあいいや」といっそ諦めることも肝心です。外国人同士は価値観も異なりますので、それを全て分かり合おうとしたら労力を要します。できるところは妥協をしますが、必要のないところは割り切りが必要です。

臨機応変の対応が求められる

いかがでしょうか。外国人と働く際には、価値観もマナーも言語も違いますから様々な苦労があります。もちろん本来はお互いが広い視野を持っていれば良いのですが、相手が人の話を聞く耳を持たない場合、一方的に努力を強いられている気がしてストレスが溜まることもあるかもしれません。そのためには自分で優先順位を付けた上で、多少の妥協をしながら、臨機応変に対応しなくてはなりません。頑張りすぎも身体に毒です。