原爆の正当性を問い直す!1995年にアメリカで起こった原爆論争について

アメリカの首都ワシントンDCにあるスミソニアン博物館はとても有名ですよね。その中でも、スミソニアン航空宇宙博物館は映画ナイトミュージアム2のロケ地となり、関心を持った人もいるのではないでしょうか。

実は、このスミソニアン航空宇宙博物館は1995年、太平洋戦争終結後50周年を迎えるにあたり、原爆展をめぐって大きな論争となった場所なのです。ここでは、それが一体どのようなものだったのか簡単に紹介していきたいと思います。

原爆投下に関するアメリカ世論の変遷

 アメリカでは原爆は必要だったと考えられていた

オバマ大統領が広島や長崎を訪れ、さらに安倍首相が真珠湾を訪れたことにより、今や原爆をめぐる議論は一段落ついたと言えるでしょう。最近では、アメリカでも「原爆は必要なかったのではないか」「原爆を投下するにしても、もう少し日本に原爆に関して説明するべきではなかったのか」「デモンストレーションをしてみせるべきだったのではないか」などという意見が出ています。つまり、必ずしも原爆を投下する必要はなかった、他に方法があったのではないか、という考え方が多く出ているのです。

その一方で、太平洋戦争終戦50周年を迎える1990年代半ばまではまだまだ「原爆は必要だった」という意識がアメリカの中では当たり前でした。実際には、核兵器が人間を含める動物やその社会にどのような影響をもたらすのかあまり知られていなかったということもあり、さらに今のような日米関係が築かれていたわけでもないため、広島や長崎がその後どのような状態になったのか、アメリカがわかっていなかったということもその考え方の理由だと言えるでしょう。

 現代は原爆に関する研究が進み、理解が深まっている

特に1960年代から原爆に関する当時の資料が公開されるようになり、今は様々な研究が進められています。アメリカにおいても原爆の正当性を問う調査が行われ、原爆は必要なかったと考える研究者も存在します。

また、インターネットなどによって世界各地の情報を手に入れられる時代となったことも大きいでしょう。日本は世界的にも「訪れてみたい」と思われる国家であり、広島や長崎に行ってみたいと考えるアメリカ人も珍しくありません。今後は日本人がハワイに行った時、パールハーバーのアリゾナ記念館を訪れるという人も増えていくかも知れませんね。

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原爆の正当性を問い直す!原爆投下は必要だったのか?

 原爆に関する特設展の企画

まだ原爆が必要だったという見解が一般的だった1992年、3年後に終戦50周年を迎えるという状態になったスミソニアン航空宇宙博物館は、戦後50周年を記念して核兵器がどのような意味を持つのか、原爆に関する展示の企画を開始しました。スミソニアンは広島の原爆資料館などにも問い合わせ、広島や長崎から様々な資料や被爆者の遺品などを借り、それを展示しようと考えたのです。

これは非常に画期的な計画でした。アメリカが信じていた「原爆投下は正しかった」という考えを前提にした計画ではなく、「原爆は正しかったのか」と来場者に疑問を投げかける形の計画だったのです。だからこそ、スミソニアンは広島や長崎から資料を借り、中立的な立場でそれを展示しようと考えていました。

 退役軍人や国民から反対されて展示が変更

しかし、シナリオの概要が公開され、退役軍人やアメリカの国民から大きな批判を浴びるようになりました。「スミソニアンの原爆展は日本人の視点になっている」と批判され、最終的にその展示は原爆を投下したエノラ・ゲイを中心とした小規模なものに変わり、広島や長崎からの資料や遺品等は展示されないことになったのです。さらに、スミソニアン航空宇宙博物館の館長マーティン・ハーウィットは辞任に追い込まれました。

1995年、アメリカはこれほどまでに原爆に対する理解には難色を示していたのです。そしてこのスミソニアンの原爆展論争は未だに原爆研究に大きな影響を与えています。

実は、これを聞いた当時アメリカン大学に留学していた日本人学生が広島や長崎に問い合わせ、アメリカン大学で原爆に関する展示を行っています。そこには多くの来場客が訪れ、原爆に関する知見を深めたのです。

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終戦50周年を企画したアメリカの切手

 アメリカ合衆国郵便公社がキノコ雲の切手を発行

終戦50周年を記念し、アメリカが原爆に関する企画を考えたのはスミソニアン航空宇宙博物館だけではありませんでした。実は、アメリカ合衆国郵便公社は終戦50周年を記念し、キノコ雲の切手を発行したのです。そのキノコ雲の切手には”Atomic bombs hasten the end of the war, August 1945.「原爆が戦争を終結させた」”と記述されていました。

当然ながら、この切手の発行は政治的な問題になり、大出俊郵政大臣は「アメリカがこんな切手を出すなら、対抗して原爆投下は国際法違反と書いた切手を発行したいところだ」と主張しました。国民からも大きな反発が出て、最終的に日本降伏を発表するトルーマン大統領の切手が発行されることになったのです。

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正しい知識を身に付けることが大切なのではないか

 誤った知識が風評被害を拡大させる

もちろん、今も原爆をめぐっては様々な論争が続けられており、原爆が正しかったのか間違いだったのか1つの結論を出す事は不可能だといえます。その一方で、家族を戦争で亡くしている、家族に被爆者がいて自分も「被爆者2世」などと差別を受けた、などという人と、特にそのような経験をしていない人が違う意見を持つのは当たり前だと言えるでしょう。

しかし、核兵器に対する脅威が理解されるようになった今、原爆を投下された国家の人間として放射能などに正しい理解を示すことも大切だと思います。今から10年ほど前になりますが、広島の平和記念公園に行った時、石碑に触ろうとした子供に対し「被爆しちゃうから触っちゃっだめ!」と叫んだお母さんを見かけたことがあります。被爆とは関係ありませんが、2008年に中国製の毒餃子が話題となった時に100円ショップでおもちゃを欲しがった子供に対し、「中国製なんて舐めたら死ぬよ!」と言っているお母さんを見たこともあります。このような誤った知識こそ、風評被害を拡大させてしまうのではないでしょうか。

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お互いへの理解を深めるために

最近はワシントンDCに旅行に行くという人も増え、スミソニアン博物館に訪れた経験を持つ人も多いのではないでしょうか。しかしスミソニアンの中でも人気を誇る航空宇宙博物館は、1995年にこのような大きな議論を展開させた場所なのです。

もちろん、普通に生活していると、このような歴史認識などについて考える機会も滅多にないですよね。しかし、例えば海外旅行に行ってみる、海外の人と話をしてみる、などということによって日本に良いイメージを持ってもらうということも大切なのです。あなたが外国人と話をしたとき、あなたの態度が日本人の態度だとして受け取られる可能性もあるのです。インターネットなどが発達し、気軽に国際交流ができるようになったからこそ、お互いについて良いイメージを持ち、国際関係を改善させていくことが可能になるのではないでしょうか。

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