アメリカへの留学は誰もが1度は夢見るものなのではないでしょうか。しかし、アメリカの大学は学費が日本の医学部並みの学費となり、なかなか賄えるものではないという現状があります。そのため、交換留学などを利用する人が多いですよね。
ここでは、主に大学院生目線でのバイトの制限についてお話しします。
アメリカの留学生のビザ
F1ビザ
アメリカに留学する学生たちは、F1ビザというものを入手します。語学留学、交換留学、正規留学のどれであったとしても、アメリカに留学する際はF1ビザになります。そして、このF1ビザには2つの制限があります。
このF1ビザでアルバイトをしようと思ったら、週に20時間しか働くことができません。日本に来る留学生たちは週に28時間のアルバイトが認められていますから、それよりも時間が短いということがわかりますよね。
また、F1ビザでアルバイトをする場合、どこでも良いというわけではありません。アルバイトができる場所は学校のキャンパス内でのみと決まっています。例えばカフェテリアや厨房、図書館や研究室など、様々な場所でアルバイトがありますから、そのようなアルバイトをするしかないのです。これも、日本に来る留学生たちは風俗営業等以外の仕事であれば基本的に制限はありません。アメリカに留学する場合は日本よりも規制が厳しいのです。
学業との両立
先ほど、アメリカの大学は学費が高いという話をしました。1年で400万円程度の学費は珍しくありません。そのため、正規留学をしている学生ならば少しでも授業料や生活費の足しにとアルバイトを考えますし、語学留学や交換留学をして
いる学生は言語能力の向上を求めてアルバイトをすることがたくさんあります。
しかし、アメリカの大学は講義の準備や課題に追われ、20時間以上のアルバイトをする人はほとんどいません。日本ではアルバイトのために授業をサボったり、アルバイトやサークルに力を入れたりする学生も決して少なくはありませんが、アメリカでは簡単に単位を落としてしまうことがありますから、授業をサボってまでアルバイトをするという感覚は無いのです。
大学院生にはお金がない!?
大学院生は奨学金制度を利用する
大学には、学部生と大学院生がいます。学部生が留学する場合、基本的には自分で学費を払うか、交換留学等の制度用いるケースがほとんどです。その一方で大学院生の場合、様々なプログラムで奨学金を取って留学するという選択肢が増えます。例えば、アメリカの学者や大学院生、研究者や専門家を対象とした国際交換プログラム、フルブライトなどはその最たる例です。
例えば、フルブライトは出身国によってビザの年数が異なります。例えば、大国ドイツでは4年のビザが取れますが、小国ベルギーでは1年のビザしか取れません。4年間のF1ビザであれば留学中に学生ローンを借りることもできますが、1年間ではそうもいかないのです。
多くの大学院生たちはこのようなプログラムを利用して海外の大学に行くことが多いのです。また、親からも「大学院の学費は自分でなんとかするように」と言われているケースも多く、奨学金で学費や生活費を賄わなければならないということも決して少なくありません。そのため、F1ビザの中でできるアルバイトというものが非常に重要になります。
「何年かけてでも良いものを!」スタイルの大学院
その一方で、アメリカの大学院はとにかく何年かけてでも良いものを作り上げるということにこだわりを持っていることがあります。
例えば、日本の大学院は博士前期課程(修士課程)が2年、博士後期課程(博士課程)が3年であり、かつては出来る限り長い時間をかけて博士課程を終えるということが一般的でした。しかし、分野にもよりますが、近年では最多の3年で終わらせる、ということが一般的になりつつあります。
それに対し、アメリカでは出来る限り長い時間をかけて良いものを作り上げるという傾向があります。つまり、先ほど述べたプログラムを利用してきている大学院の留学生の多くは、もしもプログラムの年数が過ぎてしまって奨学金が取れなかったり、自分自身で学費が賄えなかったりした場合、F1ビザの範囲内で仕事をして学費を払うしかないのです。
アルバイトは大学のPR
大学院生よりも学部生が雇われることも多い
先ほど、F1ビザはキャンパス内の仕事しか認めていないという話をしました。しかし、大学にもよりますがキャンパス内の多くの仕事は学部生を対象としたものになっています。学部生を対象とした方が給与も少なくて済みますし、大学としても「学部生にアルバイトのチャンスを与えている」ということでPR効果が得られるからです。
そのため、奨学金が取れなかったり、学生ローンを借りることができなかったりした大学院の留学生たちは、収入の術がさらに減ってしまうのです。博士課程の学生の場合、例えば大学の講師などをすることができれば少しばかりまとまった収入になりますが、研究室などでアルバイトをするとなれば、たとえフルタイムで働いたとしても時給が10ドルに満たないなど、大した収入にならない現実があります。
フルタイムで働きながら学業は終わるのか
さらに、週に20時間しか働けないという事は平日の5日だけでも1日4時間しか働けないということになります。4時間と聞けばたいした時間には感じませんが、自分で研究をして論文を書かなければいけない大学生には4時間も働かなければならないというのは相当の負担です。
また、時給10ドル程度で学費と生活費を賄い、研究をするための研究日まで稼がなければいけないとなると本当に大変です。実家や恋人からの援助、あるいは学生結婚でもして配偶者の援助でも得られない限り、アメリカの大学院で学位まで取得するというのは財政的にも大変なのです。
大学院で留学を考える場合は現実的に
留学と聞くと、多くの人は学部生の交換留学や語学留学を思い浮かべるのではないでしょうか。まさか自分でF1ビザの範囲内でアルバイトをして生活しながら学費を稼ぐ、ということまでは考える人は少ないでしょう。
しかし、大学院で留学をするとなるとそこまで現実的に考える必要があります。述べた通り、実家や恋人、配偶者からの援助が得られるのであればあまり心配することはありません。しかし、自分の力で大学院を卒業したい、自分の力で学位を取りたい、と考える場合は、F1ビザの労働制限を真剣に受け止める必要があるのです。