外国で働く時、思いもよらず文化の違いによって困ることがあります。日本なら当たり前のことでも海外では当たり前ではないということがあるのです。私は、ミャンマーに駐在していたことがありました。その時、ミャンマーの人たちとの考え方の違いにより、様々な問題が生じたこともあります。ここでは、ミャンマーの人との関わり方についてお話ししたいと思います。
ミャンマー人のバックグラウンド
上の人の指示に従う
海外の人について理解をするには、その国の背景について考えなければいけません。ミャンマーは、かつて軍事政権下にありました。つまり、彼らは良くも悪くも上からの指示に忠実に従う傾向があるのです。
そのため、ミャンマーの人に指示を出すときには、外国人からの指示で動かそうとしても無理があります。そもそも外国人では上の立場にいませんから、彼らはなかなか動こうとしません。もしもミャンマーの人に指示を出したい場合は、ミャンマーのマネージャーや責任者から指示を出してもらったほうが効果があります。
リスクを負いたがらない
ミャンマーの人に指示を出し、彼らが行動したとします。すると、彼らは確かに指示を忠実に守りますが、新しいことに挑戦しようといった意欲を見せる事はありません。特に新たな指示を出した場合、彼らはなかなか行動できないといった問題点があります。
かつて、ヤンゴン市内に日本食レストランにおいてブレーカーが故障するというトラブルがありました。しかし、そんな時でもミャンマーの人たちは誰1人動かなかったと聞いています。つまり、リスクを負いたくない、責任を取りたくない、といった考え方が一般的なのです。
「分からない」と言わない
「分かった?」と聞かれたら「分かった」と答える
私が働いていた会社では朝礼がありました。その際に、日本人責任者が「わかりましたか?」と問いかけると、ミャンマーのスタッフたちは一斉に首を縦に振ったのです。
しかし、後から個人的に「さっきの話は理解できましたか?」と聞いてみると、彼らは恥ずかしそうに笑いながら「ちょっとわかりませんでした」と答えたのです。このような事はよくあることです。もちろん、理解しているスタッフもいるのですが、中には「わからない」ということをはっきり言えない人も多いということを感じました。
もちろん、これはミャンマーの人に限ったことではありません。日本人も同様のことがあります。特に様々な国の人が集まる場所では、わからない事はわからないとはっきりという必要があります。
対処法
しかし、このような「わからない事はわからないとはっきり言えない」という事について、彼らだけに改善を求めるわけにはいきません。指示を出す側も、彼らの性格をきちんと理解した上で動かなければいけないのです。それこそ、責任者の役割です。
このようなときには、わかったかどうか聞き、「わかった」と言われたら相手の口からいちど説明をしてもらう、そしてしっかりと説明ができれば理解できていると捉える、という方法を導入することにしました。
これは、子供に対しても同じですよね。子供に対して「わかった?」言えば、おそらく子供たちは「わかった」と答えます。しかし、そこで「何がわかったのかな?」と問いかけることで、子供がしっかりと理解をできているかどうか確認することができます。
日本のやり方を押し付けてはいけない
日本のやり方が全てだとは思ってはいけない
ミャンマーで働いていて思うことは、日本の常識は世界では常識とは限らないということです。
数年前、日本大使館と日本の放送局などが協力し、ヤンゴン市内で大規模な日本祭りを開催しました。土日を使ったイベントでしたが、土曜日には多くのミャンマー人が押し寄せてしまって収拾がつかなくなったため、日曜日には駐在員が駆り出されました。
当日の混乱を防ぐため、私たちが会場配置の説明を受けている時、放送局の責任者が私たちのところに来てこのように言ったのです。「ミャンマー人は真面目なんだから、しっかりと整列の指示を出せば並んでくれるだろう。なぜその指示ができないんだ?」
彼は、「ミャンマー人は真面目なんだから、指示さえ出せばしっかりと列に並べるはず。彼らが会場に押し寄せて混乱を巻き起こしてしまうのは、お前たちがしっかりと指示を出していないからだ」と言いたかったようでした。
ミャンマー人の気質を知る
私は耳を疑いました。最初に述べた通り、ミャンマーは軍事政権の影響を受けていますから、上からの指示にはしっかりと従います。しかし、上下関係のない外国人からの指示ではなかなかうまくいません。彼らは召使いではないのですから、私たちが指示をすればその通りに行動するというものでもないのです。そんなことも知らず、「ミャンマー人は真面目なんだから」「指示を出せばやるはず」などという考え方は非常に失礼です。
混乱を収集するためにも、ミャンマー人の特質をわかっていればこそ、どのように対応したらよいのかということがわかります。確かに私たちは指示を出すといった形ではなく、混乱がないように対応しなければいけません。それは、ただ単に口で指示を出せば良いというものではないのです。
現地人は召使いではない
このように、ミャンマーの人と仕事をすることで、私は様々なことを学びました。日本で常識だからと言って、それが海外でも常識だとは限りません。むしろ、日本で常識だと思っている事を海外で期待してはいけません。
また、よく日本人が勘違いしやすいことですが、海外の人は日本人の召使いではありません。たとえそれが日本から見た発展途上国であったとしても、たとえ日本人が上司であり、現地の人たちが部下であったとしても、彼らは日本人の召使いでは無いのです。そのため、「彼らは都合よく動いて当然」という考え方は改めなければいけません。
日本とは違うミャンマーという国を意識し、その国を理解しようとすることで、その人たちの行動様式が納得できるようになります。もちろん、一緒に仕事をするからにはお互いに歩み寄らなければいけないのですが、やはり相手の考え方を尊重するということも大切です。そして、相手が理解できるように配慮するということも一緒に仕事をする上では重要なのではないでしょうか。
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