人種差別というとついアメリカを思い浮かべたり、それは白人と黒人の問題であって自分には関係がないと思ったりしませんか?しかし、人種差別というのは誰もが受ける可能性があるものです。ここでは、私がアメリカで直面した人種差別について紹介したいと思います。
嫌なシャトルバスの運転手
大学院生の時、私は研究のためにアメリカのメリーランド州、カレッジパークに滞在して、米国国立公文書館に通うことにしました。公文書館とは歴史的な公文書(条約、宣言、外交文書、政府関係者の報告書や伝達メモなど)を保管し、公開する機関です。
滞在すると決めたビジネスホテルには無料のシャトルバスがあり、最寄り駅と公文書館には無料で送迎してくれるというサービスがあったため、それはありがたいと思っていました。
冷たい対応
シャトルバスは昼間は常に利用可能で、ホテルの外にある駐車場で待っていれば良いとホテルのスタッフに言われていました。駐車場でシャトルバスを待っていると、 運転手さんらしき黒人の人がやってきました。「運転手に行き先を告げるように」と言われていたので、運転手さんに「公文書館に行きたいんだけど」と伝えたのです。するとその運転手さんは私をチラッと見て、あごで乗車するように指示し、黙って去っていきました。
白人には優しい
とりあえず乗れと指示されたのでシャトルバスに乗り込むと、あとから白人の乗客がたくさん乗ってきました。シャトルバスの運行ルートとしては、まず最寄り駅に寄ってから公文書館、という順で、私以外の白人の乗客は皆、最寄り駅で降りる人達でした。
黒人の運転手は白人の乗客にはものすごく優しく、最寄り駅に到着し白人の乗客が降りていたときには窓から手を振り、”Have a nice day!!(よい1日を!)”と叫んでいたことを今でも覚えています。
私には無視
しかし白人たちがいなくなった後、その運転手の表情はがらっと変わり、そのまま不愉快そうに運転をしていました。公文書館に着いた後、私は「ありがとう」と言ってシャトルバスを降りたのですが返事はありませんでした。ホテルの受付の人からは、「迎えに来て欲しい場合は運転手にその旨を伝えれば迎えにきてもらえる」と言われていたので運転手さんに「5時に迎えに来て欲しい」とお願いをしました。しかし、運転手からは返事がなく、これはきっと迎えには来ないなと本能的に思いました。案の定、運転手が迎えに来ることはなく、私は右も左も分からず、全く調べていなかった公共のバスを使ってホテルに戻りました。
「アジア人の女の子がいるからさ」
前日にこんな経験をして、再度シャトルバスを使うかどうか悩みました。あんな嫌な思いをしながら送迎してもらう意味があるのかどうか迷い、自力で公文書館に行くための手段も調べましたが、もう一度だけシャトルバスに乗ってみようと思ったのです。
私を見て深いため息
翌朝、駐車場にはシャトルバスが停まっていましたが、運転手はいませんでした。シャトルバスには白人のご夫婦が2人乗っており、その2人に「公文書館に行きたいんだけど、このシャトルバスで大丈夫かしら?」と尋ねたところ、2人は「大丈夫よ!乗りなさい!」と笑顔で言ってくれたので、安心して乗ったのです。
しかし、次に昨日の黒人の運転手がやってきました。彼は私の顔を見て深いため息をつきましたが、それでも白人のご夫婦には笑顔で挨拶をしていました。
人種差別丸出しの発言
その後、とんでもないことが起こったのです。白人の男子大学生らしき7人のグループがやってきました。その7人は最寄り駅に行きたいと言うことで、7人全員一緒にシャトルバスに乗りたいとの事でした。シャトルバスは運転手を含め7人乗車のサイズで、既に白人ご夫婦と私が乗車しているので、残りは3人しか乗ることができませんでした。それゆえ、7人全員が一緒に乗る事はそもそも不可能だろうと思っていました。
するとその時、運転手が7人グループに「君たちはシャトルバスには乗れないよ。アジア人の女の子が乗っているからさ」と言ったのです… 全身の血が凍ったような気がしました。この黒人運転手は私に冷たかったわけではなく、私がアジア人だから、このような失礼な態度をとっていたのです!「アジア人の女の子が乗っているから、君たちは乗れない」というのは、立派な差別発言です。1955年、アメリカ市民権運動のきっかけとなった、モンゴメリー・バス・ボイコット事件を思い出さずにはいられませんでした!
二度とそんなシャトルバスには乗らない
この運転手の言葉を聞いた後、私は二度とこのシャトルバスには乗らないと決心しました。もちろん、私が乗らなくても支障はないし、別に暴力を振るわれたわけでも、あからさまな被害を被ったわけでもないので我慢すれば良かったのかもしれませんがやはり「そんな発言をされてまで絶対に世話になるものか!」と思ったのです。むしろ「差別されているのにも関わらず、それが分からずバスに乗り続けるアジア人」といった目で見られるのもごめんでした。
他のアジア人宿泊客
考えてみれば、不思議なことがありました。そのホテルには、私以外にも日本人や中国人の研究者が宿泊しており、朝食の時に少しだけ話をしたことがありますが、彼らの目的も公文書館でした。しかし、彼らを公文書館で見かけるにもかかわらず、彼らをシャトルバスの駐車場やシャトルバスで見かけたことは1度もなかったのです。
公文書館では皆、研究のための調査をしていますから、挨拶をするだけで直接シャトルバスについて話をしたことはありません。でも、アジア人の宿泊客が多いことを考えると、そのアジア人がシャトルバスを全然使っていないということは不自然でした。もしかしたら、皆も同じような経験をしていたのかもしれません。
その後
その数日後、ホテルの受付で働いているインド人と仲良くなり、一度、公文書館まで車で送ってもらったことがありました。その時に、どうして無料のシャトルバスを使わないのかと聞かれました。
私が、シャトルバスで何が起こったか、何を言われたのかを話すと、その人は「あー、あの運転手ね、いつもそうなんだよね」と苦々しい表情でうなずいていました。どうやら、アジア人が好きでは無いようで、宿泊客とのトラブルもいろいろあるようでした。
発言には気をつけなければならない
人種差別と言うのは、誰が受けてもおかしくないものなんだなということを学んだ一件でした。あの黒人運転手が、本当にアジア人に差別意識を持っているのか、それともアジア人に嫌な思いをさせられたことがあり、それ以降アジア人を避けているのか、それについてはわかりません。もしかして、アジア人に嫌な思いをさせられた経験があり、アジア人とは関わりたくないだけなのかもしれません。
しかし、それでも発言には気をつけなければいけないと思います。
一歩間違えば大惨事
海外には日本のような接客サービスと言う概念はほとんど存在しませんので、日本と同じサービスを海外に求めること自体が間違っているということはよくわかります。しかし、日本ならば大問題になるようなあの運転手の発言も、アメリカでは許容されるということが怖く感じました。
私は嫌な態度を取られただけで終わりましたが、人種という問題が関われば、暴力が加わってもおかしくはありません。特に海外でそんなトラブルにあえば、自分の身を守ることさえ危うくなるかもしれません。いくら海外に慣れていたとしても、海外は海外だと割り切り、身の安全を1番に考えて行動しなければいけないのだと痛感した出来事でした。
学校の宿題で異文化との共生について書くので参考にさせていただきました。
不愉快な体験をしてしまったのですね…
でも、あなたは悪くありません。
これが私が言える最大のメッセージです。
初めてコメントさせて頂きます。
とても不愉快でショックな体験をしてしまった事は本当に運が悪かったと感じます。貴女には何の落ち度もない様に思えます。そしてこういう事は誰にでも起こりうる事で、自分の事の様にも受け止めてもいます。しかしどうかこの一件に心を痛め続ける事なく、折角の留学という貴重な時間ですから楽しく過ごして頂ければと思うばかりです。
さて、昨今アメリカには多くの中国人留学生が多いと聞きます。私の住む西欧でもそれは同じですが、西欧でお行儀が悪いと冷たい目で見られたり、無視をされますから、そういう形でお行儀が悪かった中国人でも少しずつながらマナーを習得する傾向にある様に思えます。
しかしながら、アメリカへ行く中国人と、西欧に来る中国人は若干ながら中国でのソーシャル・ステイタスも違う様に思います。西欧での生活費は米国の様に安くはありません。この事から、西欧に来られる中国人留学生のご家庭の多くが所謂富裕層です。
そういう背景もあると思いますが、西欧に来る中国人というのは現地の人達に冷たい目で見られたり、無視をされるだけでもマナーの悪さに気付く事ができるレベルの人達ではあるんだろうな、と思う点も否めません。しかしアメリカの場合はお国柄もそうだと思いますが、西欧人から見ても引いてしまう一面は割とあります。その様な、良く言えばカジュアル、悪く言えば洗練さに欠ける国の底辺層(だからシャトルバスのドライバー)が紳士的に振る舞えるとも思えません。
私が思うに、そのドライバーさんは中国人が増えた事でアジア人(十中八九、いろいろやらかす中国人)から嫌な経験をした可能性がありますし、アジア人を恐らく一括りに考えてしまうほどに情報量が足りていない可能性があります。また、それまで白人と黒人で二分して来たアメリカでは、アジア人はまだ新参者という認識なのかも知れません 。それに対する多少の思い込み優越感?の様なものがあって、こういう方々の脳内ではアジア人は格下、という風に思う事で、底辺から抜け出せない自分の人生の鬱憤を晴らすからの様にメンタルのバランスを保っている可能性は否めないかも知れません。
こういう傾向は底辺層によく見られるものです。西欧でもそれは変わりませんが、このドライバーさんほど剥き出しではないと思います。そもそも西欧では肌の色による差別はあまりないと思います。当然ながらアジア人だから、ヒスパニックだから、アフリカ人だから、という類の差別もあまり見かけた事はありません。私の住む仏語圏では、身なりに気遣いのない人はボロクソ言われますが、それでも在住国の言語をマスターし、在住国のルールに従っている限りは、差別的な事はないと思います。底辺層は自分に自信がないので、相手を笑い者にして気分を良くしている、というパターンはよく見られます。そういう人達の多くは、出稼ぎや難民などで西欧に入り込んで来た人達という傾向が強めです。
もし同じ様な事で折角大金を払って留学したのに、渡航先で嫌な経験をされて落ち込んでいたり、自分を責めている方も中にはいるかも知れないと思い、長文ながら書き込ませて頂きました。私自身、欧州にはトータルで20年くらい住んでおります。学校も仕事も西欧の国々で東京でもアメリカの投資銀行で仕事をして来た経験があります。職場で色んな国の方々と仕事をしましたが、自分に否がなければ自分を責めるべからず、です。
また差別という言葉で片付けるのではなく、その様な言動をする者の置かれている状況を想像する事です。また白人が差別を受けていないと思わない事です。彼らも何かを言えばもの凄く叩かれます。『OO人が〜』と言ってしまう人というのは、ただ単に教養が低いのと、自分の惨めな人生を自覚しているからこそ、希望に満ちている人に意地悪をしているだけ、というケースが殆どかと思います。要は脳が幼いままなのかも知れません。つまり嫉妬というものですね。ですから、記事を書かれた彼女の様にご自身によってマイナスの要因は『避ける』という方法が一番賢い方法なのです。
日本と比べたら、日本人にとって日本ほど完璧な国はありません。日本は日本人を優先に作られている国だからであり、日本人の接待やマナー・レベルは、西欧の様にお金持ちだけのものではなく、お金がない人に対してまで万遍なく提供されている状態です。その様な国と比べてしまうと、お金がない人達からすれば劣るケースが多い事が殆どですから、日本が提供してくれているハイ・スタンダードを当たり前だと思ったまま、それを海外の在住国に期待する事は愚かしい事だと予め理解していれば『まぁこんなもんだよね』で腹も立ちません。
長くなりましたけれども、少しでも『差別』と『嫉妬によるイジメ』を区別できる様になって貰えたら良いなぁという思いもあり、書き込みました。西欧では、賢い者は(トラブルをふっかけられても、怒らず)自ら去る、という方法を選択する人が多めに感じます。どこの国にも難しい人はいますから、自分に落ち度がなければパーソナルにとらない事が大事だと感じます。
海外生活に挑戦される皆さんの毎日がより楽しく輝く事を願っております☆
誤字訂正:
①
X:底辺から抜け出せない自分の人生の鬱憤を晴らすからの様に
O:底辺から抜け出せない自分の人生の鬱憤を晴らすかの様に
②
X:ご自身によってマイナスの要因は『避ける』という方法が一番賢い方法なのです。
O:ご自身にとってマイナスの要因は『避ける』という方法が一番賢い方法なのです。
誤字、大変失礼しました。