教育達成度と先生・生徒の関係の違い
タイの教育制度とは?
タイの小中高と日本の小中高の教育は、どちらも、小学校6年、中学校3年、高校3年で、中学卒までが義務教育で同じです。大きく違うのは、その教育の達成度です。日本の場合は、ほとんど全員が義務教育を達成しますが、タイの場合は、十分に達成されない地域もあります。特に沿岸部や東西南北の他国との国境を接している県では、その傾向が強いです。例えば、バンコク近郊のタイ湾に面したサプットプラカン県などは、ミャンマーからの移民が多い地域で、北西のメ―ホーソン県などは、山岳民族などがいたり、南部では、独立運動をしている地域で、教育達成率がよくありません。タイではこういった地域格差に加えて、個人格差も大きいです。最近では、義務教育での学力の低下の問題が社会問題として新聞などでよく報じられています。一方で、タイの裕福な家庭の小中高生は、日本と同様、有名大学に行くために塾に行っています。
先生は絶対的存在
あと、学生の態度ですが、現在の日本の状況をよくつかめていないのですが、タイでは、日本に比べて、先生に対する尊敬度がとても高いです。ほとんどのタイの小中高生は、タイでお決まりのワイ(手を合わせてお辞儀する)を先生に大変丁寧にします。普段から目上の人を敬う文化が培っているからだと思います。比べて日本の場合は、先生と生徒については、よい意味では、距離が近い、悪い意味では、尊敬度は、そんなに高くない印象があります。
例えば、タイの場合、そのことが影響しているのかどうか、先生の威厳が高くて、例え先生がそんなに正しくなかったとしても、タイの小中高生は、まずは従順に従うところがあるようです。そんな話を友人から聞いたことがあります。また、以前、ちょっとしたきっかけで、タイの中学校に出張教育に行ったのですが、やはり、とても統制のとれた感じでした。生徒が列をつくって先生の話をしっかりと聞き、少しざわつくと、先生が声を出して指摘し、静まるという感じで、一般に先生の威厳が高いのがよくわかりました。特に、さらにざわついたメンバーがいたクラスに対して、ペナルティーとして、連帯責任で、スクワットを10回させていたのは、ちょっと面白かったです。
日本の学校では
一方、日本では、私のイメージでは、一般的に、中学生は、結構生意気で、先生に反抗することもあるようなイメージがあります。極端ですが、以前、日本で、学生が先生を刺したというニュースがありましたがタイでは大変驚かれていました。とてもとても考えられないからだと思います。またタイに限らず、世界の多くの国々では、先生の日(Teachers Day)というのがあり、タイにもそれがあり、その日は、学生が特別に先生に花束を渡して敬意を示すといった光景が小中高に限らずあちらこちらでみられます。前で書いたように、タイでは先生への尊敬度が高いのですが、そのことがよくわかるような感じで、どちらかというと厳かに行われています。日本には、先生の日はないですし、自分の記憶でも、先生に対して、花束を渡すなどして特別に敬意を現した日の思い出がないです。卒業式の日に、先生に思い出とお礼の寄せ書きをしたぐらいで、ちょっと寂しい感がします。
日本企業駐在員の子どもたちの教育
タイの駐在員の子どもの教育は?
以前、タイの田舎の小学校の校舎で、土日に、日本の子どもたちの補習授業をしたことがあるのですが、そのとき、両国の教育事情の違いから、日本の企業に勤める駐在員の子どもの教育に対する苦悩がよくわかりました。バンコクには日本人学校があり、3年ぐらいで日本に戻る場合、子どもをそこに通わせるのが普通なのですが、バンコクから離れた地域の工業団地、特に自動車産業の発達した工業団地などに住む多くの日系企業の駐在員の子どもは、地元の学校かインターナショナルスクールか選ばなければなりません。その際、上記で書いたような教育事情の心配から、そして、いい意味では、国際感覚をつけさせるということから、高い授業料ながらも、子どもをインターナショナルスクール(以後インター)に通わせるケースが多いです。
駐在員の子どもたちの苦悩
しかしながらその際、日本に帰ってからの教育にとても心配を覚えるのだそうです。以上の経緯から大使館が動いて、土日のみで補習校というのを開催していました。インターの授業がない土日だけでも日本の教育制度にあった教育を提供して、その不安を解消するというものです。私は、小学1年生から高校3年、さらには浪人生までの算数や数学を中心に見ていましたが、そこで、激しい教育格差や海外の駐在員社会を垣間見ました。
教育格差については、中途半端にインターに通わせていて、さらには、ちょっと長めに駐在している駐在員の子どものなかには、しっかりと母国語の日本語が出来ていないせいか、国語力が徹底的に不足していて、それが他のすべての科目にも影響しているようでした。勿論、インターに通っているのですが、英語のレベルも大変低かったです。よく覚えているのはタイにいるせいか「雪」という言葉を全く知らなくて説明するのに苦労したことです。算数を教えるにもそれ以前の部分を伝えるのが大変だったのを覚えています。それとは逆にスーパー的に勉強ができる子もいました。その子らは、母国語をしっかりと掴んだうえで、海外のインターナショナルスクールを複数渡り歩いている子どもたちでした。大学受験も日本の大学など考えもせず、オックスフォードやハーバードといった海外の一流大学に願書を出して、実際に進学していました。
タイの日本企業駐在員の社会とは?
次に、日本企業の駐在員社会についてです。補習校で授業しているなかで、同じ会社の駐在員の子どもが同じクラスに複数いるケースが普通で、なかでも、親が部長、課長、そして係長の子どもが一緒に机を並べているため、とても、微妙な感じでした。なんだか親の会社での縦関係が子どもに直接影響している感じがちょっとした会話などでも見受けられ、私はいつも苦笑していました。狭い社会なので、しかたない反面、子どもには関係ないのにといろいろと考えさせられたのを覚えています。
駐在員の子どもは素直で良い子が多い!
あと、補習校に通う駐在員の子ども共通点としては、とても親のいうことをよく聞く子どもが多かったです。多分、治安を心配している部分もあるのか、子どもが自由に外で遊びまわるということもなかなかままならなく、外出も親を頼りながらなので、どうしてもその状況が影響していたのだと思います。皆とても素直で、親の威厳も高い感じがして、日本国内ではありえないなと思っていました。
上記のような補習校事情でしたが、現在は、インターネットの普及とともに、駐在員の子どもの教育も少しづつ変わってきていると聞いています。インターネットは場所を選びませんので、そういったシステムを上手く利用して、日本とタイの教育事情格差を埋めるサービスを提供している会社などもあるようです。そのため、親の会社での地位を気にしていることもあいまって、補習校に通わせない選択肢をとる家庭もでてきているそうです。
タイと日本の教育の今後
このように、タイの小中高と日本の小中高は、制度はほぼ同じでも内容が全く違い、そこには、文化的な背景が深く根付いているのがわかります。しかしその違いについてどちらが劣っている、どちらが優れているというのではなく、お互い学ぶところがあるような気がします。ただ、タイで働く多くの日本の駐在員は、子どもの教育について、数年で帰ってしまう前提のため、その違いに最も敏感で、いろいろと頭を悩ましているのが現状でした。私の印象では、駐在員の子どもの教育格差は特に大きく、その子がどの時期にどれぐらいの期間海外に居たか、また両親が、どのような対策したかに大きく影響されているような感じでした。
しかし、そういった駐在員の多くの子どもたちは、インターナショナルスクールに通いながら、いろんな制限や葛藤のなかで学んできているので、達成度にかかわらず、そのなかで、貴重な何かを得ているはずだと何度も感じることがありました。日本に帰ってからも、その経験がきっと生きるのだろうと思います。今後は、インターネットなどの発展などにより、様々な可能性が広がってきているので、駐在員の子どもの教育事情もどんどん変化していくのではないかと思います。
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