5月も半ばを過ぎると、さすがに日中は暑さを感じるようになりました。でも、朝夕はとても冷えるので、フランスでは軽いコートやガーディガンは必須衣類のひとつです。
さて、今日の話題は、「仏人には遠い夢、日本の鉄道」、「日本人地区でナイフ殺傷テロ事件」、「スキャンダル!仏救急サービス」の3本です。
仏人には遠い夢、日本の鉄道
先週、お昼の国営テレビ・ニュース(Fance2)で、日本の鉄道の完璧さが紹介され、フランス人の感嘆とため息を呼び起こしました。
ミッション・インポッシブル
日本にいると、「時間厳守、明確な運行情報、設備の完全完備」、このような鉄道環境はごく当たり前の世界ですよね。あまりにも当たり前過ぎて、事するとJRの有難さがピンとこない?という日本人の方もいらっしゃるかもしれません。でも、ここフランスでは、全くミッション・インポッシブルの世界です。列車の遅れなどは、日常茶飯事。運行情報は、列車の発・到着時間のギリギリになるまでその発着ホームが不明。鉄道設備などは、例えばレールの状態に至っては、TGV(仏新幹線)を除くローカル路線などは、予算不足?のためか身震いするほど錆切っています。このように、数え上げたら切りがありません。
奇跡の奇跡、平均年間遅れ30秒!!
この日、フランスの国営テレビFrance2は、日本の鉄道の完璧さを評して「ほとんど宗教的信念」とまで称えていました。日本では 、列車の年間の平均遅れは30秒!もうこれは、フランス人にとっては、神がかり的世界です。同テレビはまた、ある新幹線の操縦士の時間厳守への意気込みを紹介。遅れるのはもちろん許しがたいことですが、早く着くのもダメ。11月14日付の「この度、新幹線が20秒早く到着したことをお詫びいたします」というJRの公共メッセージを紹介しながら、いかに日本の鉄道が、人間業を通り越した奇跡的完璧さなのかを紹介していました。
摩訶不思議、日本の鉄道
しかしながら、このような完璧さの裏には、ほとんど軍事的精神とも思えるようなJRの育成システムがあることを、テレビ・ニュースは説明していました。例えば、ホームに入ってきた新幹線を待ち構えて待機しているピンクとブルーの制服姿の清掃員グループ。彼らが瞬く間に列車内を掃除する様子を紹介しながら、France2は、清掃員グループとは呼ばず、「ピンクとブルーの清掃軍」と称していました。フランス人には、まさに軍隊のように映るようです。また、駅のホーム路面上に、各列車の停車場所と車両番号がマークされていて、利用客は、自分の列車の座席番号に値する地点で事前に列を作って待っている様子なども、摩訶不思議な世界として紹介されていました。
その代償は高い
しかし、以上のようなサービスの代償は非常に高い。例えば、フランスのパリ・リヨン間は、ほぼ日本の東京・大阪間と同距離ですが、フランスでは片道35€~ですが、日本はその3倍以上110€!France 2は最後に、サービスの完璧さを求めるか、廉価性を求めるかの二者択一を問われた場合、フランス人は後者を選ぶのでは?という結論を匂わせていました。「少々遅れてもいいから、安い方がいい」というわけです。
日本人地区でナイフ殺傷テロ事件
またしても、フランスでイスラム過激派によるテロ事件が発生しました。先週の土曜日12日の夜、オペラ座近くの路上で刃物をもった男性1人が、数人の歩行者を襲い、内1人が死亡、他4人は重軽傷の被害に遭いました。オペラ座界隈は、別名日本人街とも呼ばれています。日本レストランはもちろん、日本食料品店やフリータックスのブティックが集中したところで、日本人の多く集まる区域です。日本人の被害者もあり得たかもしれません。
「S」ファイルの問題化
さて、ここでいつも問題となるのが、「S」ファイルのあり方です。「S」ファイルというのは、2015年パリで起きたイスラム教過激派襲撃事件を機に明らかにされた、フランス警察が作成した反社会的な過激思想を隠さない人物のブラックリストです。「S」はセキュリテイーの頭文字からとったもの。今回の犯人も、しっかり「S」リストに載っていた人物でした。ロシアのチェチェン共和国から10年前に家族とともにフランスへ移住し、フランスに帰化しました。世間では、「いつも事件が起こってから「S」ファイル人物だったとわかる」と歯がゆさをかくしきれません。何のための「S」ファイルなのか?というわけです。
監視しきれないという現実
「S」ファイルは、極左翼・右翼グループや宗教的要素を含む過激派がほとんどで、イスラム教過激派グループもその中に含まれます。現在、フランス国内には2万件近くもの「S」ファイル人物が存在し、全員を完全に警察の監視下におくのは不可能です。まして、言論の自由を掲げるフランスでは、ネットなどで過激的思想を示すだけで、彼らを拘置することはできません。「S」ファイルの適用方法は、今後ますます、大きな議論を呼び起こしそうです。
スキャンダル、仏救急サービス
皆さんは、夜間に突然ひどい腹痛に遭った場合、どうしますか?当然、119番で救急車を呼びますよね。ところが、つい最近、重度の腹痛を訴えて救急サービスに電話通報した女性が相手にされず、数時間後に死亡するという事件が起きたのです。
「その通り、どうせみんな死ぬのよ」
事件は、昨年12月29日、ストラスブール近郊に住む、当時22歳のナオミ・ムセンガさんが強度の腹痛を訴えて助けを求めて、SAMU 15番(仏緊急医療サービス) へ通報をし、ムセンガさんが「死にそう・・・」と訴えたのに答えたオペレーター(女性)が、「その通り、どうせみんな死ぬのよ。あなたも・・・」などと答え、ムサンガさんの訴えを相手にせず、冗談として拒否したのです。5時間後にやっと緊急病院へ運ばれたムサンガさんは、緊急処置手遅れのため死亡しました。
遺族が病院側へ死亡理由を問いただして、当日のSAMUオペレーターとムセンガさんの電話録音を請求し、ようやく事件が明らかになったものです。問題のオペレーターは、停職処分の上、人命を預かる立場にある職務を果たさず、死亡させた罪に問われ告訴されるとのことです。
いたずら電話と間違えた?
オペレーターは、度重なるSAMUサービスへのいたずら電話と間違えたとのことですが、この事件を機に、政府の医療機関への予算不足から起因する緊急医療サービスとしての育成システムの欠如が浮き彫りになりました。
今週16日、ムセンガさんの家族がナオミさんを忍ぶ「白い行進」を企画し、2度とこのような事件が起きないことを願って多くの人々が集まりました。
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