中国で有名な場所の1つに南京大虐殺記念館というものがありますよね。私は歴史を専攻しており、以前からこの南京大虐殺記念館には関心がありました。最近やっとこの記念館に行くことができたので、ここで感じたことをお話ししたいと思います。ちなみに、南京大虐殺に関しては中国側が証拠捏造しているなどという噂もありますが、これはそれらに関して議論するものではありません。
説明の仕方
中国語、英語、日本語表記がある
まず博物館に入って驚いたのはすべての写真や資料に中国語、英語、日本語の表記があるということでした。そして日本語の記述は文法的にも正しいものとなっており、私は中国語は分かりませんが英語と日本語を読み比べてみると極めて正しい翻訳になっているということがわかります。
日本語表記があるという事は日本人の来館者を歓迎するということです。そこには日本人への憎しみなどが書かれているわけではなく、資料や写真の説明がわかりやすく書かれていたのです。
学術的な資料が使われている
確かに写真などは実際に捏造することが可能なのかもしれません。しかしこの南京大虐殺記念館では写真だけではなく、実際に使われていた武器の展示や街中の再現も行われていましたし、新聞や機密文書など、極めて学術的な資料も利用されていました。
また、使われていた新聞は中国のものだけではなく、日本のものもありました。日本人が中国人を暴行した残酷な写真ばかりが展示されているのではなく、それに関する資料も同時に展示されており、悲惨さばかりを訴えているわけではないということがわかります。あくまでも何が起こったのかということを客観的に伝えているように感じました。
外国人研究者・ジャーナリストの紹介
第二次世界大戦中、南京に留まって何が起こっているのかということを海外に伝えようとした外国人研究者や外国人ジャーナリストの紹介もありました。つまり、中国側の目線だけではなく南京大虐殺を目にした外国人の目線も紹介されているということになります。
また、戦争が終わった後は南京大虐殺に関して研究を進めてきた日本人研究者の紹介もされていました。つまり日本人側の目線も展示されているということになり、極めて多角的な視点が用いられているということがわかるのです。
和解を目的としている
展示の最後の方には、「歴史をしっかり明記しなければならないが、恨みは記憶敵ではない」「我々が南京大虐殺犠牲者のために国家追悼式を挙行するのは善良な人々一人ひとりの平和に対する志向と堅守を喚起するためであり、恨みを継続するためではない」などといった記述がある資料の展示が行われていました。つまり、南京大虐殺記念館の展示の目的というのは決して日本人への恨みを述べるものではなく、歴史や事実を残そうとしているものであるということが伺えます。
さらに中国にある日本人学校から送られた千羽鶴なども展示されていました。日本人から贈られたものを展示するということにも深い意味があると感じています。
優しい人々
帽子を落としてしまった
私は夫と当時9ヶ月になる息子と一緒に、真夏の暑い最中に南京大虐殺記念館に行きました。息子がかぶっていた帽子をポケットに入れていたのですが、息子の顔を拭くために同じくポケットに入っていたハンカチを出した時に息子の帽子を落としてしまったのです。ちょうど記念館の敷地に入ったところで、まだまだ歩いて記念館にたどり着かなければいけない状態でした。私はそのまま歩きながら息子の顔を拭き、帽子を落としてしまったことなど気づかなかったのです。
すると後ろから大学生ほどの女の子が走ってきて帽子を届けてくれました。わざわざ走ってきて落し物を届けてくれるなんて、とてもありがたいと思ったものです。彼らはおそらく私たちが日本人であるとは思わなかったでしょう。しかし、このような残酷な歴史の展示を行っている場所で人の優しさに触れ、とても心が温かくなりました。
館内が暑い
私たちが南京大虐殺記念館を訪れたのは8月半ばの事でした。冷房が効いているかと思いきや館内はかなり暑く、あまりの蒸し暑さに息子が泣き出してしまったのです。他の来館者たちも持っている扇子や団扇で扇ぎながら展示を見ている状態でした。そして私たちは団扇などを持ち合わせていませんでした。
国旗を掲げて歩いているわけではありませんから、決して来館者は私と息子が日本人であるということを知っていたわけではありません。しかし、夫に抱っこされている息子が泣いていた時、夫の隣にいた60代ほどの男性が「暑いよねー」と言いながら自分の団扇で息子に風を送ってくれました。とてもありがたかったです。
ぜひ行ってみてほしい記念館
インターネットで「南京大虐殺記念館」と検索すると、証拠の捏造だの同情を引くような展示物だの、ネガティブな情報がたくさん出てきます。私もこの記念館に行くまではむしろどのような展示がされているのか、ナショナリズム満載の展示なのではないか、と懐疑的でした。しかしいざ南京大虐殺記念館に行ってみたら、極めて客観的な記述がなされており、学術的な資料が多いことにも驚いたのです。もしも歴史に興味があるならば、ぜひこの南京大虐殺記念館に足を運んでみてください。
ちなみに私の印象ですが、南京はほとんど英語が通じません。この時私たちは中国の北京に住んでおり、北京でも英語が通じないと思っていましたが、南京の「英語が通じない」レベルは北京の「英語が通じない」レベルの比ではありませんでした。かつての南京国民政府の首都であり、中国4大古都の1つであるというイメージから観光客が多いようにも感じますが、観光客に優しい街では無いように思いました。そのため、中国語が離せない状態で南京に行くのであれば、Google翻訳等のアプリを携帯に入れていくことを強くお勧めします。
南京大虐殺記念館
【住所】南京市建鄴区水西門大街418号
【アクセス方法】南京地下鉄2号線雲路駅下車すぐ
入場料無料
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