旅行や留学とはレベルが違う仕事での文化の壁

オーストラリアでビジネスを始めるためには、厳しい条件をいくつもクリアしなければいけません。私は、20年ほど前にワーキングホリデーでメルボルンに1年滞在し、いつかオーストラリアでビジネスをしたいと決めていました。そして、ついにビザを取得し、シドニーで日本食のレストランを開業したのです。ここでは、私が経験した、日本とオーストラリアの違いについて紹介します。

初顔合わせでのマナー

 ビジネスビザの条件

私が経営する小さなレストランの場合、現地の人を最低でも2人は雇わなくてはいけませんでした。これはビジネスビザの条件の1つです。早速、応募してきたオーストラリア人を4人にまで絞り、最終面接を兼ねてレストランでの朝食ミーティングに呼びました。食事のマナーには人柄が現れますし、食に対する姿勢をリラックスした環境で観察したかったからです。

 オーストラリア人がびっくりしたこと①

その時、妻も同席しました。最初、妻がマスクをしてレストランに入ってきたとき、4人のオーストラリア人は驚いたようです。日本では、マスクは違和感のあるものではありません。しかし、考えてみればオーストラリアでマスクをする人を見たことがありません。病院の待合室で済見かけないのですから、公共の場では尚更です。
1人のオーストラリア人は、妻に「強盗が入ってきたのかと思いました」と言い、もう1人は「そんなに具合が悪いのですか?」聞いたのです。
日本人のマスク着用は、外国人からは理解ができないと思われることもたくさんあります。オーストラリアに限らず、海外で日本人がマスクをすると「伝染病を患っている」かのように思われることもありますから、注意をしなければいけません。

 オーストラリア人がびっくりしたこと②

その後、オーダーした朝食が運ばれてきました。その時、妻が朝食を写メで撮ったのです。これも日本ではよく見る光景ですが、オーストラリアではまず見ることがありません。
妻はテーブル全体の写メも取りたいと言いましたが、あっさりと無視されてしまいました。「昔の映画でも見たけど、日本人は筋金入りのカメラ好きだね」と言われ、オーストラリア人はどんどん朝食を食べ始めたのです。
日本でも、少々高級なレストランでは出てきた食事の写メは撮りませんよね。日本では普通に見かける行動ですが、海外では周りを見て、写メを撮って良いかどうか考えた方が良いでしょう。

 

オーストラリアの上下関係

 上下関係が分かりにくい

その後、2人の採用を決定し、数週間後の開店に向けてトレーニングを始めました。その時に感じたことですが、オーストラリアの職場では、上下関係が非常にわかりにくいのです。なんせ英語ですから、よほど大きな会社でない限り、みんな下の名前で呼び合います。敬語を使い分け、特に上司には役職名までつけて呼ぶという日本とは違い、オーストラリアの職場では実にフランクな英語が飛び交います。

 上司にも意見をいう

当然私がオーストラリア人を雇っているわけですから、私の方が上司にあたるわけです。しかし、私が雇ったオーストラリア人も私に様々な注意をしてきます。例えば、私がラーメンをメニューに入れたいと考えた時、オーストラリア人のMさんは「いちいち出汁を取るのは効率が悪い」と意見をしてきました。2件隣にある、店長がアジア人のラーメン屋さんは手作りのこだわり出汁を売りにしていました。しかしMさんは、「あのラーメン屋からは朝の仕込みに出汁を取る匂いがしない」「手作りの出汁なんて取っていない」「正直者は馬鹿を見るんだから、こっちも合理的に行こう」と言ったのです。
私は「うまいものを作るのに合理的は無い」と言って、Mさんに注意をしました。しかしMさんからは「あなたが早起きしたり、手間をかけ、お金をかけなければいけないんだから、自分はそこを思いやっているんだ」と反論がありました。
日本では、雇い主と雇われている人がここまで意見を戦わせるということもないでしょう。私も慣れるまではなかなか苦労したものです。

 

オーストラリア人に指示をする時

 行間を読み取らない

日本人は、「行間を読み取る」という難易度の高い会話術を持ちます。しかし、オーストラリア人にはこのような会話術は通用しません。とにかく積極的に話し、強気で行くということが大切です。話が丁寧すぎたり、例を挙げすぎたり、脱線しすぎたりすれば、ポイントがわからないと言われます。

 賄賂も重要

相手に自分の要求を飲んで欲しいと思う場合、いっそ、賄賂を使うという手段もあります。特に肉体労働の男性には効き目があります。オーストラリアでは、350ミリリットルのビールが6つ入ったパック4つ分を1カートンと言いますが、この1カートンを差し入れすることで、自分の要求を飲んでもらえることがあります。また、値引きしてもらえることもありますから、何か要望がある場合は使ってみてください。

 

郷に入れば郷に従え

いくら日本人のやり方があったとしても、オーストラリアで働くならばオーストラリアのやり方を尊重しなければいけません。私が経営するレストランでは、すぐに1人がやめてしまい、私と口論をしたMさんも、来月辞める予定です。また新しい人を探さなければいけません。
もちろん、妻はマスクも写メも控えています。違う国で働くという事はなかなか大変ですが、その国の文化や習慣は尊重しなければいけないと思っています。