郷に行ったら郷に従えという諺があります。その通り、海外に行く前にはその国のマナーを知っておくことが大切ですよね。日本では当たり前のことでも、海外に行ったら非常識になってしまうこともありますし、逆に日本では非常識であっても、海外では当たり前、ということも少なくありません。特にマナーにおいて正しいコミュニケーション能力を身に付けておかなければ、たとえ言葉が通じたとしても、現地の人とうまく交流することができないでしょう。ここで、アメリカ在住の筆者が私の経験を踏まえながら、渡米前に知っておくべきマナーについて解説したいと思います。
行動のマナー
車が道を譲ってくれたら手を挙げてお礼をする
信号のない横断歩道や交差点では、アメリカでも日本と同じく歩行者優先です。日本では車が道を譲ってくれた時、小さく会釈をして道を渡っていく人が多いのではないでしょうか。しかし、これはアメリカでは全く通じません。
アメリカにはお辞儀や会釈という習慣がありません。だからこそ、歩行者がお辞儀や会釈をしたとしても、運転手はそれに気づかない可能性が高いのです。だからこそ、「歩行者が何も言わずにそのまま道を渡ってしまった」「なんて非常識な奴だ」と思われてしまうのです。
ですから、アメリカで道を譲ってもらった場合は片方の手を運転手のほうに向けて軽く挙げましょう。ちょうど「やぁ」という位の位置に少し手を挙げ、アイコンタクトを取るのです。
国家斉唱の時は帽子を取って立てば良い
アメリカでは、スポーツの試合や学校の式典などで国家斉唱を行います。アメリカ人は全員その場で規律をし、帽子を脱ぎます。そしてアメリカ人は左胸に右手を当て、国家斉唱をすることが多いです。
もしも外国人としてこのような場所に居合わせたら、帽子を脱いで立てば充分であり、左胸に手を当てる必要はありません。このポーズは「私はアメリカ国家に忠誠心を持つアメリカ人です」という意味ですから、アメリカ人ではない人がこのポーズをとる必要は無いのです。ただし、相手国への敬意を込めて帽子を取り、立つようにしましょう。
私は大学の式典で国家斉唱の機会に遭遇しました。つい周りのアメリカ人を真似して左胸に手を当てたところ、友達に「あなたってアメリカ国籍なの?」と言われ、そこまでする必要はないということを学んだのです。日本で国家斉唱するときにそこまで意識したことがないため、私自身も新たな発見をしました。
対人マナー
飲み会は交互に支払う
日本では友達と飲み会をする時など、お会計は個別で払ったり、割り勘にしたりすることが多いですよね。しかし、アメリカで飲み会をする場合は割り勘ではありません。例えば相手が支払ったら次は自分が支払う、という具合に交互に支払っていくというやり方が一般的です。これは友達への思いやりというよりは、バーへの思いやりと言えるでしょうか。レジで個別で支払ったり、割り勘をして支払ったりすれば、時間ばかりがかかってしまいますよね。
ちなみに、アメリカには日本のように「先輩が後輩の分を全て支払わなければいけない」「年長者が全て支払わなければいけない」などという文化はありません。相手が先輩でも年上でも、自分の番になったら支払います。
私はかつて先輩と2人に飲みに行ったことがありますが、おごってもらうのが申し訳ない気がして頑なに割り勘を申し出ました。しかし、バーにとっては割り勘はスマートの支払い方では無いのだということを教えてもらったのです。日本では当たり前ですが、海外に行くと違うのですね。
”How are you?”と聞かれたらきちんと”Fine”などと答える
お店に入る時や友達と会ったとき、会話を始めるときにはほぼ必ずと言って良いほどの割合で”How are you?”という言葉が飛び交います。「お元気ですか?」どういう意味ですが、これはただの定型文ですから、正直に「今は風邪をひいていて」「昨日親と喧嘩して」などという必要はありません。ただ”Good”や”Fine”と答えることが重要です。
日本では「いらっしゃいませ」と言われても、ほとんどのお客さんは何も答えませんし、いらっしゃいませという言葉に対応する返答がありませんよね。しかしアメリカでは店員さんから”How are you?”と聞かれたとき、何も答えなかったら非常に失礼なのです。
私はこれを知らなかったため、店員さんから声をかけられた時ににこっと笑うだけで特に返事をしませんでした。一緒にいた友人に「なんで返事しないの?あの人のこと嫌いなの?」と言われ、初めて自分はなんて失礼なことをしたんだろうと気づいたものです。
握手は適度に強く、そしてお辞儀はなし
日本ではビジネス以外で握手をする機会が少ないですよね。しかし、アメリカでは初めて会った人に握手をすることが一般的です。日本で握手をする時はそっと手を握り、同時にお辞儀をすることも多いのではないでしょうか。しかし、アメリカでそのような握手をしてしまうと印象が悪くなります。
アメリカで握手をするときは、しっかりと力を込めて握ることが大切です。握力を測っているわけではありませんから、そこまで強く握る必要はありませんが、しっかりと相手の手を「握る」ことが大切です。そして背筋を伸ばし、相手の目をしっかりと見て笑顔作ります。相手も同じことをしますから、お辞儀をすることで目を逸してしまったら非常に失礼になってしまうのです。そもそもお辞儀という文化がない国ですから、お辞儀をする必要はありません。
私はアメリカで握手をするたびに、周りから少し痛い位力強く手を握られているような感じがして、なんでだろうと思っていました。後になって、自分の握手が弱すぎたのだと知りました。
「知らなかった」は通用しない
そんなつもりはないのに、そういう気持ちでやったわけではないのに、と思ったとしても、マナーを知らなかったというためだけに友達や店員さん、はたまた学校の先生に不愉快な思いをさせてしまうこともあるかもしれません。日本にいると、どうしても日本の文化や常識から外れた言動をする外国人観光客を見かけることがありますが、彼らも本当はそれらが日本ではマナー違反であるということを知らないだけなのかもしれません。もしかしたら誰かがそっと教えてあげたら、お互いに気分良く過ごすことができるのかもしれません。
しかし、なんといっても自分がそのように思われないために、外国に行く前は必ずその国のマナーを調べておくことが大切です。アメリカに旅行することがあれば、ぜひ参考にしてもらえればと思います。
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