皆さんはイタリアに対し、どのようなイメージを持っているでしょうか。ピザやパスタ、ワインなど、おいしそうな食材を思い浮かべる人もいるかも知れません。あるいは中学校の時に習った「長靴型の国」ということを思い出す人もいるかもしれません。イタリアの内部には、国土面積が世界で1番小さいバチカン市国と言う国があります。そして、ここにはカトリックの総本山であるサン・ピエトロ大聖堂があります。バチカンとイタリアは違う国ですが、ここからイタリアはカトリックの国、と知っている人もいるかもしれませんね。ここでは、イタリア男性と結婚しイタリアに移住して感じたイタリアのクリスマスについて紹介します。
イタリアのクリスマス
日本人のクリスマス
日本の場合、クリスマスは恋人と過ごす日だと思っている人も多いと思います。そのため、「今年はクリスマスまでに彼氏が欲しい」と思っている女性も多いですし、恋人ができず、1人で過ごすクリスマスのことをクリぼっち、と表現することもありますよね。あるいは、クリスマスを家族で過ごすとしても、ケンタッキーフライドチキンで夕食を買い、クリスマスケーキを食べ、サンタさんからクリスマスプレゼントをもらう、といったイメージを持っている人も多いかもしれません。
イタリアのクリスマス
しかし、イタリアの国民の9割はカトリック信者(キリスト教の一派)です。カトリック信者にとってはやはりクリスマスは重要です。
そんなイタリア人にとって、クリスマスは家族で過ごす大切な日なのです。イタリア人はもともと家族の時間をとても大切にする国民ですが、クリスマスには家族に感謝すると言う気持ちが加わります。クリスマスに向けて部屋を飾り付けたり、クリスマスツリーを飾ったり、あるいは年末に向けて食事の準備をしたりなど、準備から家族揃って楽しみます。
町中がクリスマスモード一色になり、メリークリスマスと言う言葉があちこちに飛び交います。
クリスマスの準備と飾り付け
クリスマスの期間
日本では、クリスマスといえば12月24日25日と言うイメージがあるかもしれません。もちろん、日本のクリスマス商戦には目を見張るものがあり、日本の場合は10月31日のハロウィンが終わった瞬間にクリスマスの商品が売り出されますよね。その一方で、イタリアでは12月に入って初めてクリスマスらしさが出てきます。街中ではイルミネーションが始まり、基本的に12月8日から1月6日までがイタリアのクリスマスとして認識されています。
クリスマスの飾り付け
12月8日は聖母マリアがキリストを受胎した日、つまり、聖母マリアが天使から「あなたはキリストを身ごもりました」と告知を受けた日として扱われています。そのため、この日は祝日となっており、この日に家族でクリスマスツリーを出すのです。これより前にクリスマスツリーを出してしまうと、幸運が逃げると言われています。
そしてイタリアでは、プレセピオというキリストの誕生を再現させた置物を飾ります。イエス・キリストは馬小屋で生まれたと言われています。このプレセピオとは、馬小屋の中で聖母マリアが赤子であるキリストを抱き、その周りに父ヨセフや3人の羊飼い、東方の博士や家畜たちが集まっている図を描いた人形のことです。日本でも見たことがあるという人もいるのではないでしょうか。
そして、これらのクリスマスの飾りは1月6日の三賢人の日まで飾ります。これは、12月24日の夜に誕生したキリストを東方の博士たちが拝みに来たと言う祝日です。東方の博士の人数は実際ははっきりしていませんが、3人いたと言われており、そのために三賢人の日と言われているのです。また、カトリックではこの日のお祭りを公現祭と呼びます。
三賢人の日にすること
この日には、子供たちはほうきに乗った魔女のおばあさんからプレゼントを貰います。この魔女のおばあさんは1月5日の夜にほうきに乗って空を飛び、描く過程を回って良い子にはキャンディーやチョコレート、悪い子にはお菓子の代わりに墨(すみ)を靴下に入れると言われています。もちろん、実際は墨ではなく、墨に見立てた黒い色の砂糖菓子などをキャンディーと交えて入れることもあります。
日本では、「良い子にしていたらサンタクロースが来るよ」などと子供たちに教えますよね。それと同じようなものです。子供には「良い子じゃないこともあった」と反省を促す、教育的なイベントです。
クリスマスの過ごし方
クリスマスの食事
イタリアは美食の国と言われますが、本当にその通りです。クリスマスは家族が集まり、ディナーを楽しみますが、招待客は普段着ではなく、正装で出かけて行きます。どの家も「お母さん」が腕を振って自慢の料理を作り、テーブルセッティングを行い、前菜からパスタ料理、メインディッシュ、付け合わせ、デザートと言うコース料理を振る舞います。そして、もちろんワインもいただきます。
クリスマスのメニュー
12月24日のクリスマスイブでは、魚がメインのフィッシュディナーをいただきます。これは、キリスト降誕の前日に体を清めると言う意味があるのです。この日の前菜では生ハムやサラミなどの肉料理ではなく、小魚や野菜のピクルスなどが中心になります。パスタやリゾットも魚介類ですし、オーブンで焼いたり揚げたりした魚と野菜の付け合わせをいただき、最後にはドライフルーツやチョコレートが入ったスポンジケーキのようなお菓子をいただきます。
25日には、午前中は教会のミサに行きます。そして家に帰ってから家族でランチをいただきます。前日の夜にものすごい量のディナーを食べているため、私は毎年「まだお腹がいっぱいなのに!」と感じてしまうのですが、イタリアの人たちは本当によく食べます。クリスマスのランチはお肉料理が中止になります。生ハムやチーズなどの前菜、ラザニアなどのパスタ、そして仔牛のオーブン焼きやフライなどが振舞われます。
クリスマスのプレゼント
全員が全員分のプレゼントを用意する
クリスマスプレゼントにも日本とイタリアには違いがあります。イタリアでは、家族やパートナー、親戚や友達など、とにかく顔を合わせる人全員分のプレゼントを用意しなければなりません。例えば、クリスマスに15人集まるのであれば、15人分プレゼントを用意しなければならないのです。しかし、もちろん15人からプレゼントをもらうことができます。それは嬉しいですよね。子供たちにはさらにサンタクロースもやってきますから、12月25日の朝はクリスマスツリーの下にたくさんのプレゼントが並びます。
顔を合わせる人全員分のプレゼントを選ぶとなると大変ですが、イタリアでは赤い下着と言う定番のプレゼントがあります。12月31日、大晦日の夜に新しい赤い下着を身につけると幸せになれるという言い伝えがあるため、イタリアでは年末が近づくと、赤い下着がたくさん売り出されるようになるのです。
体重計には乗りたくない
カトリックの国ならば、クリスマスは毎日のように教会に行ってお祈りをしなければいけないのかと勝手に誤解をしていたこともありました。しかし、家族で集まって食事を楽しむなんて素敵ですよね。
クリスマスといえば、今やどこの国でも祝われるようなイベントです。しかし、その祝われ方は国によって全然違い、また、その国の背景をよく表していると感じました。
イタリアの家族と共にするクリスマスの食事は毎年量が多く、私は毎年「どうやって『もう食べられない]と言おうか」と悩みます。周りに勧められるがまま食べてしまい、翌日は体重計に乗って悲鳴をあげてしまうこともあります。
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