転職活動中に縁があり、タイの会社へ面接に。翌月には受けた会社の社員として働くようになる。よく言えばスピーティでフットワークの軽い日本人、悪く言えば無計画な人間です。小さなタイの会社で、とある部門マネージャーとして働いております。取引先は95%が日系企業。そのため、客先からは日本的なサービスやプロジェクトの管理を期待されます。企業様から依頼された要望や、プロジェクト管理をタイ人社員と一緒に取り組んでいます。
日本的な考えを決して押し付けるのではなく、解かりやすく、そして面白く説明し、楽しく仕事をしていただく事を目指しています。職場の主役はタイ人の皆様です。彼らの魅力を引き出すことが、会社や自分の成長につながると信じています。また、社内での共通言語が英語なため、私にとっては「センスを試されている。」毎日です。
業務は焦らせない、怒らない
「できます。」はほとんどウソ。でも怒らず慌てず。
ごくたまに面接に同席することもあります。タイでは若い年齢層の転職活動はさかんなので、2-30代の面接書類や履歴書拝見することもあります。書類上では、留学の経験、インターンでの経験、企業での業務経験を余すことなくアピールしています。ところが実際に、面接で聞いてみるとなんとも浅い回答が返ってきます。
例えば、記載されている技術的経験について質問をし、深堀していくと、最終的には「パソコンやソフトウエアに値を入力する作業を担当していた。」という結論に至ることもしばしば。つまり自ら定義や仮説を立て、過去の文献や仕様・公式を駆使して答えを導き出すのではなく、誰かが何かを与えてくれる前提での業務経験なのです。
また、実務でも「これ、できますか。」と聞くと、タイ人は、わからなくても知らなくても「できます。やれます。」と答えてしまいます。おそらく、プライドもありますが、上司からの評価を下げたくない、がっかりさせたくないという気持ちから湧き出る発言だと思います。案の定、待てど暮らせど成果物はあがってきません。放って置いたら、定時にしれーっと帰ってしまいます。
そんなときは、まず「じゃあ、チャレンジしてみてね。30分後に不明点をお互いに確認しましょう。」と言ってお任せします。納期が迫っている時期や、複数の業務を取り進めなければならない忙しい時はなかなかの地獄ですが、せっかく「できる」と言ってくれたのだから、こちらもお任しますという態度を見せて、信頼していることを理解してもらいます。30分後には、相手から不明点や実はやり方がわからないとか、本音が聞けるようになります。そういうときは、「調査してくれてありがとうね。」と伝え、再度説明をして再び業務に取り組んでもらうようにしています。
プライドあるのは良いこと
素直さを上手に利用するのがコツ
履歴書や職歴書の内容は嘘ではないけど事実でもなく、本人の願望にも似た気持ちも込められているような気がします。魅力的な経歴は、すぐにでも即戦力になり得るような人物に映ります。本人もそのつもりだと自負しているからこそ経歴として列挙しているし「できる」と発言するわけです。
日本人の感覚からすると苦笑してしまい、肝心な部分で肩すかしに合ったと思ってしまいますが、だからといって、この事を執拗に問い詰めることや、荒立てるような事はしません。本人だって薄々気づいているかもしれませんし、弱ったなあと困っているかもしれません。こちらも、入社早々かつ若い方に完璧なものは期待していません。ですから「アメリカのエリートは、上司の1つの指示に対しまずは7つの不明点を挙げることができるんだってさ。(※ウソです。そんな格言はありません。)」と言ってみたりします。そうするとみなさん素直なので、じわじわと反応をしてくだいます。
雑談でお互いの気持ちを楽に
雑談をして緊張を和らげる
新入社員には、人事部より、会社概要や日本人が上司であることはきちんと伝えています。以前は、入社のオリエンテーション後に部署に配属され、業務を開始しておりました。しかし、その流れではコミュニケーションが希薄になってしまい、単純作業だというのに何度もやり直しをすることがありました。
次第に本人はつまらないと感じるようになり、最終的には辞めてしまうことがありました。このような終わり方を避けるために、業務に入る前に、簡単なミーティングを設けることにしました。ミーティングといっても雑談や世間話で、緊張を和らげてもらうのが目的です。話しやすい環境を与え、好きな事や物について話してくれるまで続けます。(日本食は好き?アニメは?AKBは?最近のドラマは?等ほぼ仕事に関係の無い話を振ります。)
厳しい態度はNGなの?
ある程度の年齢や経験を積んでこられた社会人の皆様であれば、業務内での厳しい態度は一度くらい見たり、聞いたり、経験したりするものです。またその厳しさの理由が明確であった時や、自分の至らなさが原因であれば、次回はどのようにして取り組めばよいか、どこが要注意ポイントなのか、良い判断材料となり、失敗を減らすことに繋がったりもします。
タイ人は、プライドの高い方が多いと感じます。そして自分が大好き。また、嫌な事や困難に直面すると「去る」という選択肢を選びます。「やれるとろまで頑張ってみる」「困難に立ち向かう」等の思考はあまり持っていないように思います。
そもそも、日本とは異なり就職・転職は比較的簡単に成功しますし、転職を繰り返すことで自分のキャリアや給与を上げていくのが一般的です。ですから、気の合わない上司や同僚、厳しい環境に出会ってしまったら、転職という行動でそれらを回避することができます。もし日本人が厳しい態度をとったりすれば、彼らは非常に不愉快になりプライドを傷つけられたと思うようになります。
さらに、その厳しい態度が正論からくるものだったりすると、不快の矛先をどこに向ければよいかアワアワしてしまい、もはや「去る」しかないのだと判断し実行してしまいます。具体的には、早退する、翌日休む、その週を休む等、本当にその「場」から離れます。
そして数日後には退職届を提出して「去る」なんてもことも実際にありました。もちろん、そうでない方もたくさんおられますし、厳しい態度の背景やその先にあるものが理解できる人もいれば、日本人のような「努力・根性」の精神をお持ちの方もいらっしゃいます。ただ、プライドが邪魔してしまう若者も多くいるので、指導には注意が必要です。
彼らにしてみれば、厳しい態度は「偉そう・横柄」と映り→「冷たい・いじわる」→「私/僕のことが嫌い。」→「(だったら)私/僕もあなたのことが嫌い。」という屈折したフローチャートを作り出してしまいます。この我侭フローチャートが完成してしまうと、のちのち面倒な事になるので、強調して伝えた後には「まったくね、難しいよね、嫌になっちゃうよね、日本人って面白いよねー。」など、彼らの気持ちも知っているし、共感できますよ、という意思表示をするようにしています。
楽しい職場環境を作るには、まず自分から行動してみる
「楽しく働く」のは非常に難しく、社会で働く人々が常に頭を悩ますテーマだと思います。日本人同士でさえ気苦労な問題が、文化や国が異なる者同士であればさらに難解で、答えを見つけるのに、何日も何ヶ月もかかったり、はたまた答えが1つでなかったり、本やネットで検索することができたりできなかったり、正解があるようでないような、厄介なものです。
しかし難しく考えず、同じ目標に向かう仲間だと思ってもらえるように、まずは自分の固定観念を無くし、様々な意見に耳を傾けるようにしています。また、自分が言われてうれしかったことや楽しかったことはできるだけ実践に取りいれるようにしています。
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