ベルギー出身の夫と1歳の息子と、ベルギーにて生活しています。最近までアジアの発展途上国で生活していたため、ベルギーではそれなりに「人間らしい」生活ができるのだろうと期待していました。しかし、確かに日本に近いところはあるものの、やはり日本とは全然違うというと実感することも少なくありません。
ここでは私がベルギーに来て驚いたことの1つ、ベルギーのトイレ事情について紹介します。
ベルギーではトイレでお金を払うのが当たり前!?
スーパーなど店舗のトイレも基本的に有料
ヨーロッパではトイレに入るときにお金を払わなければいけないと聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。特にベルギーはこの習慣が浸透しており、スーパーやバーなどのトイレも基本的には有料です。
これはもともとトイレを掃除している人にチップとしてお金を渡していたものが義務化し、トイレに入るにはお金を払わなければいけないという状態にしてしまったようです。ただしトイレに入るためにはお金を払わなければいけないといった法律もありませんし、禁止する法律もありません。ただ、地域や場所、係員によってもルールの拘束力は違ってきます。
田舎では「払える人は払って」パターンが多い
私はトイレに入るのに50セント支払わなければいけないということに抵抗があります。確かに郷に入っては郷に従えなのですが、日本のトイレに比べるとやはり綺麗とは言えないトイレに入るために、係員から「掃除をしているんだからお金を払って」と言われても、「どの辺が?」と思ってしまうのです。また、私たちはベルギーの田舎に住んでいますが、この辺のスーパーなどのトイレでは、確かにスタッフが座っていたとしても笑顔で挨拶をされるだけで、お金を払わなければ声をかけられるなどということもありません。実際にお金を払わずにトイレに入っていく人もいます。どちらかというと、「できたら払って」といった感じのようです。
お金を払わなかったらどうなるの?文明国とは思えない対応
電車の中でトイレに行けず、駅のトイレに行くことに…
先日アントワープに行った時、アントワープ・ベルヘムの駅でトイレに行きました。うちからアントワープまで電車で1時間半程度かかり、電車にはトイレがあったのですが、唯一のトイレに誰かが閉じこもったままで出てこず、何人もの乗客がトイレに行けなかったのです!私もその中の1人でした。夫が係員にそのことを告げたのですが、係員は「あのトイレは故障中だから誰も使えない」というばかりで確認することもしてくれませんでした。ベルヘムに着く頃、20代前半位の男性がトイレから出てきました。夫が言うには、おそらく切符を買っておらず、切符のチェックを逃れようとしていたのではないかとのことでした。
夫も「トイレでお金を払わなければいけないなんてありえない」といった考え方の持ち主ですが、以前夫がベルヘムの駅でトイレに行った時、夫が50セントを支払わずに取りすぎると係員の女性が夫を追いかけてきて、夫が用を足している真後ろに立って威圧するということがあったそうです。そのためベルヘムでトイレに行くのは少し躊躇したのですが、どうしても我慢できず、念のため50セントをポケットに入れてトイレに行きました。払えば良いことなのですが、トイレに行くのに60円も支払わなければいけないだなんて、なんとも無駄に感じてしまうのです。しかも外国のトイレにですよ!?日本のトイレの方が何倍も綺麗なのに!
お金を払う気になれず… だってそちらの責任でしょう!?
電車のトイレは無料ですから、もしも係員が誰かが長時間トイレを占領しているということに気づいてくれていれば、こちらは何の問題もなかったのです。つまり電車側の対応のために50セントを払って駅のトイレに行かなければいけないわけですから、私としては不満がありました。トイレの入り口では女性が立っており、怖い顔して50セントを払うように要求していましたが、ポケットに50セントを入れていたにもかかわらず、やはり支払う気になれなくて私はそのままスルーしました。
するとその女性は私の右腕を掴んだのです。50セントを支払うようにとオランダ語で言われたので、私は彼女の腕を振り解いて「そちらのせいで電車のトイレに行けなかった、それで『お金を払え』はおかしい」と日本語で言いました(まぁ通じるわけもありませんが)。私が個室に入ると、今度は彼女は外から鍵を開け、扉を開けようとしたのです!扉が開き、彼女は再度50セントを要求しました。私が扉を内側から強く閉めると彼女はまた鍵を開けようとしていましたが、私が「50セントは持っていない」と英語でいうと、そのまま諦めたようでした。
トイレから出て、外で待っていた夫に事情を話すと、夫は「腕を掴まれた」「扉を開けられた」というところに怒りを覚え、トイレの入り口で私が出ていく姿を睨んでいたその女性に苦情を言いに行きました(ちなみに夫がそのトイレに行った時、夫の後ろに立った女性と同じ人だったそうです)。確かに、日本を含め通常の国では、まず他人の腕を掴んだりはしません。むしろ誰かの腕を掴んだ時点で人に触れた、暴力行為、とみなされることもあり、それだけで警察を呼ばれる可能性さえあります。例えばアメリカでそのような行為をすれば、それだけで訴えられる可能性もあります。
駅のトイレでチップを払わないからトイレを使わせてもらえない?
要求されている50セントを払わなかったのだから仕方がないのでは、と思う人もいるかもしれません。しかしトイレで要求されているお金はチップですから、お店で何かを購入するときにお金を支払うという事とは違います。それにもかかわらず、チップを払わなかったということで腕を掴み、トイレの扉を開けるというのは極めて野蛮な行為といえます。彼女が腕を掴んだ時に痣でも残ったら、それこそ傷害罪としてこちらこそ警察を呼びます。
むしろ、彼女はトイレの扉を開けて何をしたかったのか、今でもよく分かりません。トイレを使わせたくなかったのか(私がお腹を下していて緊急事態だったらどうするんでしょう?それどころじゃないですよね、笑)、人間の尊厳を奪って恥をかかせたかったのか、目的が見えません。例えば子供を連れてトイレに行き、50セントがない、トイレを使わせてもらえない、となったら、「その辺でしちゃいなさい!」という親も出てくるのではないでしょうか。
ベルギー人にとってトイレのチップは「当たり前」
観光地などでは支払って当たり前と思っていたほうが良い
むしろ外国人であればトイレでお金を払わなければいけないというルールを知らない可能性もあります。また、トイレに行くときにはあらゆる事情で50セントがない、50セントを取り出す余裕がない、という人もいるでしょう。しかし、実はベルギーの人にとってトイレでお金を支払うというのは当たり前のことなのです。確かにアメリカなどではレストランでチップを払うのが当たり前ということもありますが、チップをもらうためにお店の人も努力をします。それなのに、決して頻繁に掃除をしているようには見えないトイレでチップを要求する感覚は理解ができません。
しかしそれがいかに外国人にとっておかしなルールであったとしても、警察が関与するような拘束力のないルールであったとしても、あまり関係はありません。こちらの友人に「ベルギーに慣れた?」と聞かれたとき、「トイレでお金を支払うシステムがありえない」というと、だいたい「え!?海外では違うの?」と驚かれます。
ただ、ブリュッセルなど観光地などではやはり「トイレではお金を払わなければいけない」と思っておいた方が良いでしょう。やはり観光地はありとあらゆる面で儲けようとしている側面がありますし、誰かが個室から出るたびに係員がトイレを軽く掃除している場合もあります。そのため観光地では余裕と小銭を持ってトイレに行った方が良いでしょう。
トイレでお金を払いたくない親が息子にどう教えるのか
アントワープ・ベルヘムではチップを払わないということでなかなか貴重な経験をしましたが、将来息子が大きくなり、自分の意思でトイレに行きたがるようになったら、私は息子に50セントを持たせてトイレに行かせると思います。ただし、同時にそれはベルギーを中心とする国の悪しき風習であり、他の国では違う、という事はしっかりと教えていきたいと思っています。
ちなみに、ベルヘムはアントワープ郊外ですから女性がトイレに立っているだけでしたが、アントワープ・セントラル駅など大きなところに行くと、そもそも小銭を入れなければトイレに入るためのドアが開かないということもあります。それでも私は今後もお金を払ってトイレに行くということを避けると思いますが、これは世界一トイレが綺麗だと言われる日本人のプライドなのかもしれません。正直、あの程度のトイレに50セントを要求するのであれば、ベルギーの人が日本に来たときにはトイレに入るたびに毎回10ユーロほど払っていただきたいとさえ思います。
トラブルに巻き込まれないために
日本の方がもしもヨーロッパに来て、入り口に「50セント」などと書かれたトイレを利用するのであれば、どこであったとしても基本的に50セント支払った方が安全かと思います。トイレで腕を掴まれるというのはそれこそ問題行為なのでは、と思うのですが、そういうことを問題だと思わない人もいるということを覚えておかなければいけません。
少なくとも、ベルギーに来られるあなた!アントワープ・ベルヘムの駅では要注意です!
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