私は、フィリピン・セブ島に17年以上滞在し、その間、ずっとフィリピン人たちと仕事をしています。また、単身でこちらへ渡って来ましたので、こちらで結婚し、結婚生活は今年で丸15年となり、家内(フィリピン人)との間に長女と長男の二子をもうけました。そんな中で、私にとっては、外国人と仕事をする事、コミュニケーションを取る事は日常であり、当たり前の事となっていますが、私の労働環境が日系企業であり、私に期待される機能は、大きくは、日本側と現地フタッフ(フィリピン人)との調整となりますので、常に日本とフィリピンの感覚の違い、ギャップを感じながら仕事をしている毎日です。
現地でのコミュニケーションについて
フィリピンでの言語事情
さて、外国へ駐在する方々には、その地域の現地語が出来るに越した事はありませんが、フィリピンは英語が公用語の一つとなっており、仕事の環境の中においては、少なくとも基本的な英語がマスター出来ていれば、それでOKと言えます。また、ここのもう一本の公用語はフィリピノ語(タガログ語をベースに標準化された言語)がありますが、日本には、そもそも義務教育に英語と言う教科があって、普通に教育を受けた日本人には、英語の読み書きの基礎は出来ているので、英語を会話等々で使える形に訓練した方が余程、無難でしょう。
また、ルソン以外の地域に赴任される場合には、各種の方言(方言と言ってもフィリピノ語と他の方言とでは日本語と朝鮮語程の隔たりがあります)がありますが、フィリピノ語以外の方言は、そもそも言語として標準化とかメンテナンスがされていない口語用の言語ですので、日常で現地の人と余程ディープなお付き合いをする目的でも無い場合、一時的な駐在生活でこれらをマスターする必要性は低いでしょう。
更に言えば、フィリピンの学校教育において、いわゆる媒体言語とされるのは前出フィリピノ語を除いて他全ての教科は英語です(要は教科書も英語で書かれており英語で学問を教えています)ので、仕事でのコミュニケーションは恐らく英語が最適となります。
そんな訳で、普通に仕事をしたり、普通に生活する為に主要な施設を利用したりしている分には、英語がある程度出来れば十分なのですが、非常にローカル色が強い場所によっては全然、英語が通じない場合も想定されます。反面、そうしたエリアへ踏み込む事は、外国人には安全面他でリスクが高まる事を意味しますので、むやみに近づかない事をお勧めいたします。
文化と常識の違い
異文化、異国での一定期間以上の生活経験が無いと、この事を中々、自覚し辛いのですが、日本の生活経験しかない中で、「そんな事は常識でしょう」と思っている事について、フィリピン駐在にあたっては、それが本当にフィリピンで通用するものなのかどうか、先ずは疑ってかかる事をお勧めします。
例えば、労働に対する考え方として、フィリピン人は飽くまでも生活の為の糧を得る手段であって、それ以上でもそれ以下でもありません。最近、日本の若い世代も随分、変わって来たと思われますが、日本の中年以上の世代が持つ、「滅私奉公」的な考え方は、恐らく99%以上のフィリピン人には理解されない事でしょう。逆の言い方をすると、日本の古い世代の中には、何が滅私奉公なのかすら自覚も無いまま、それを実践している方も少なからず見かけますが(苦笑)
また、フィリピンは、常夏の国ですが、日本は四季、特に冬がある国です。それ故に、例え「寒い」、英語ではCold と言う表現を用いたところで、フィリピン人の言う「寒い」と、日本人の言う「寒い」は多くの場合、その程度、感じ方が全く違っているのです。端的に言えば、全くの別物かも知れないのです。
しかし、ここで、「寒いは寒いじゃないか、何処が違う」と言われる向きがあるとすれば、もう、それ以上の理解は不可能となってしまって、そうした中で成り立つコミュニケーションでは、フィリピン人側は、表面上は、日本の本社から派遣された人である事、或いは、その肩書から見かけ上はリスペクトしてくれるかも知れませんが、本当の意味で上手く人間関係を構築し、仕事での最大限の効果が期待できないかも知れません。
移動における安全の確保
フィリピンの交通機関はストレスがいっぱい!?
私はセブ市と言う、フィリピン国内においては比較的安全とされる地域に住んでいますが、それでも、ここでの移動に当たっては、正直なところ、大きなストレスになっています。
…と言うのは、私の待遇は現地採用というか、契約労働者のような立場である為、出勤退勤に当たっては、交通費は固定費で保証されますが、基本、毎朝、毎夕、タクシーを自分自身で確保して通勤しなければならない為です。
これはもう、フィリピンの都市部では避けられな亊ですが、朝夕のいわゆるラッシュ時は言うまでもなく、日中においても、渋滞が慢性化している中で、タクシー運転手たちも、そうした事をある種の言い訳にして、メーター外にチップで幾らとか、そもそもメーターを使わないで彼らの言い値(相場を知らない相手と見ると通常の3~4倍を吹っ掛けて来る事もあります)で行こうとしたりするので、一々、そうした交渉をする時、そして時には交渉決裂して一旦乗ったタクシーを降りる等々の際、やはり、精神的な負担は少なからずあるのです。
その前に、もう一点触れておきたい事には、フィリピン一般庶民の移動手段として「ジプニー」と呼ばれる乗り合いタクシーに近い交通手段もありまして、私も時と場合によっては利用しますが、常時利用する事は決してお勧めできません。それはやはり、安全性に大きな欠陥がある事で、変な時間に変なコースのものを利用してしまった場合、強盗、スリ他の被害に遭う確率が極度に高くなる為です。また、この交通手段を利用する外国人は稀なので、目立ってしまう事もその一因です。更には、これらは多くの場合日本の中古軽トラック、小型トラックを改造した車両になるので、衝突安全基準などなく、一旦、事故を起こしたら車両がバラバラに壊れ、乗客乗員が怪我をしたり、最悪、命を落としたりする事もまま、あるから、非常にリスキーなのです。
さて、そんなところから外国人駐在員が通常使える最低限の手段がタクシーと言う事になりますが、上記、比較的マシなセブ周辺の状況でも、上記のような状態の中、マニラ首都圏では、もっと状況は悪く、乗客が外国人と見た場合、普通にメーターをまわして走るケースは皆無に近い状況になります。
タクシーに乗る際は小銭を用意!
また、追加情報として、多くの場合、タクシーには十分な釣銭準備が無く、(場合によっては、釣銭が無いフリをして本来、釣銭として返さなければならない金額をまんまとせしめる場合もあります)これで揉める事もありますので、私の場合は常に小さ目の金額の御札(100ペソとか50ペソ、20ペソ)を確保しておくように心がけていますし、もし、どうしても釣りが出ない場合には諦めます。何故なら、最近起こった実際の事例として、これはフィリピン人の乗客だったのですが、60ペソの料金に対して100ペソ札で払おうとしたら、釣りが出ないと揉め、殴り合いの喧嘩となったが、乗客の方、殴られどころが悪くて路上に倒れて亡くなった…こんな事も発生しているからです。(日本円換算高々100円未満の事で揉めて命を落としたのでは割に合いません。また、もし、殺されたとして、生涯収入1,000万円未満の加害者からは何も保証はされないと理解しておいて下さい。これは路上を歩いていて車にはねられる等々、全てのリスクを含んで言える事です)
そんな訳で、もし、あなたに社用車があてがわれるならば、公私とも、遠慮なく、使わせてもらうべきです。会社に負担をかけるようで、実は、それがご自身と会社の利益を守る事にも繋がりましょう。また、タクシーを利用する場合は上記の事に留意し細心の注意を払って頂く事です。
最近、配車アプリでGrab を代表するシステムがありますが、この場合、安い時間帯にはタクシーの料金と殆ど変わりませんし、相手の身元が簡単にトレース出来るので、安全性も高いですから、このご利用もお勧めできます。
勤務外の時間のおすすめの過ごし方
どうやって休日を充実させる?
こちらへ駐在される方々には、恐らく日本国内のように常に残業、休日出勤等々になるような場合は恐らく、フィリピン標準の働き方に合わないので少ないとは思われますが、逆に空いた時間をどう過ごすかが重要になるでしょう。それは、日々、異なる気候、文化、言語の下で仕事をする事は知らず知らずの内に大きな負荷となっている筈ですので休暇には英気を養えるようにした方が良いのです。
私用外出するに当たっては、第1章でも触れておりますが、事情に精通していて、安全を確保する術を知っている信頼できる人が同行できる場合か、ご自身が数年の経験を経て余程現地事情が分かった場合を除いては、現地人ばかりが集まるような場所へ行くことは避けた方が良いでしょう。多くの場合、こうしたエリアでのコストは外国人が主体で集まる場所よりも安く上がりますが、全てにおいて、安い事=リスクが増大する…と理解するのが、ここでの基本になります。
例えば、セブではダイビングも楽しめますが、このレジャーは危険と隣り合わせで、万が一の事故により潜水病にかかる事も想定されます。こうした場合、余りに格安のローカルパッケージの中には、こうした事故に対処できる備えが無い場合が多く、即時、生命の危険にもつながるのです。
―常に緊張感をもって―
さて、これまでに色々と述べましたが、フィリピンと言う場所、ちゃんと情報に通じ、安全を確保する事さえ出来れば、日本人にとっては比較的住みやすい場所だと思います。
実は、これ、滞在歴20年近くにもなり、フィリピン人の家族の中に住む私自身にも対する戒めとして書いていますが、ここでの生活は、最低限の注意と備えをもってはじめて成り立つものだと理解する事、何時もそれを心に留めて置く事が肝要になります。
私自身、ここに長年滞在する中で致命的な被害はこれまで無いのですが、スリの被害は2回、ひったくりの被害は2回あります。ひったくり被害の1回目は、夜間、酔って歩いていた際にシンナーを袋に入れて吸っていた少年たちを見つけてカメラを向けてしまった事で彼らに襲撃されたと言うもの、2回目は、やはり夜道で少女の集団に襲撃され、どさくさにカメラを奪われたという内容でした。
私の経験で共通するのは、全て慣れた積りで夜道を無暗にあるいた事が要因になっています。この時、ほんの短距離であってもタクシー等利用していれば、こうした被害に遭う必要はなかったのです。
また、現地フィリピン人たちとの交流の中で変な誤解を生じさせ、恨まれるような事態を招く事は避けねばなりません。セブでは聞いた事はありませんがマニラ周辺ではフィリピン人スタッフと揉めた日本人管理職が狙撃され、殺害されたと言う事態も過去に実際に起こっているようです。
良いコミュニケーションを持ち、文化の相違を理解し、あなたの駐在が実りあるものになりますように。
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