インドネシア在住の主婦です。夫がインドネシア人です。ここ数年、好景気に沸くインドネシアでは住宅ブームが盛んです。ジャカルタでは、高層マンションの建設が続き、その風景は数年前とは全然違います。郊外にはニュータウンが続々と開発され、マイホームを持ちたいと考えるインドネシア人のために、ショッピングモール等の催事場でPR活動も盛んに行われています。私たちは社宅生活を送っていましたが、今から6年前、一大決心をして家を買うことにしました。インドネシアでは、新築住宅以外にも中古住宅の売買が盛んです。インドネシアの戸建て住宅は一般的に木材、レンガ、セメントで作られていますが、気候や建築技術など様々な要因により、非常に劣化しやすいという事実があります。わずか築3年で、すでに雨漏りなどの問題に見舞われている家も少なくはありません。したがって、中古住宅を購入したら、大規模な補修が必要になる場合が多いのです。ここでは、私たちが新築住宅に的を絞り、住宅展示場を巡ったときの事についてお話しします。
インドネシアの住宅の特徴
窓が少なくて暗い家が多い
日本で家を建てる場合、日当たりと風通しが重視されますよね。しかし、インドネシア人は日当たりや風通しには興味がないようで、むしろ、日当たりが悪い家の方が、涼しくて良いと考えられている傾向があります。インドネシアでは、長屋のように隣の建物とくっついているなど、隣の建物と壁を共有しているタイプの住宅をたくさん見かけます。つまり、角地に立っている家以外は家の側面に窓がないということになるのです。このため、昼間でも電気をつけなければならないような暗い家が多いのです。
キッチンが隔離されていることが多い
インドネシアの中流階級以上の家庭ではメイドさんを雇うことが一般的です。そのような家庭にはメイド用の入り口があり、キッチンや洗濯物干し場など、家事を行うスペースがメイド用の入り口の近くに設置されています。つまり、家族のスペースから離れている間取りが多いのです。
日本のように対面式キッチンなどでリビングルームにいる家族と話をしながら料理をする、という間取り自体が珍しいのです。
収納がない
インドネシアの人たちは、住宅建築の際に収納の充実にはこだわりがありません。湿度が高いことが関係しているのか、床下収納や屋根裏収納もありません。日本にあるような押し入れやクローゼット、作り付けの下駄箱などもないため、洋服の収納のためには衣装ダンスを、タオルやシーツ、バックなどの収納のために衣装ケースなど、靴のためには下駄箱などをそれぞれ購入する必要があり、部屋が家具でいっぱいになります。
大型の収納にはグダン(倉庫)と呼ばれる物置部屋が使われます。部屋数に余裕がある場合は1部屋を使ってグダンにすることができますが、最近ではコンパクトな住宅が多いため、すっきりと暮らしたい人には悩ましいところです。
私たちの経験
なかなか住みたいと思う家に出会えない
これらの特徴により、私たちはなかなか住みたいと思う家に出会うことができませんでした。いい家があっても予算が合わないなどの問題もあったのですが、ある日、運命的な出会いが突然やってきたのです。たまたまふらっと立ち寄ったモデルルームに理想的な家がありました。前部屋に窓があり、吹き抜けもあって、明るくて風通しが良い家だったのです。さらに、リビングに面した開放的なカウンターキッチンがあり、洗濯場もリビングからつながっており、疎外感なく家事が出来るような家でした。私たちはメイドを雇わなかったため、家の裏側にあったメイド用の部屋をグダンとして使うことができたのです。少々予算はオーバーしていましたが、これ以上気に入る家はないだろうということ、そして「残り一戸ですよ」という営業トークに乗せられ、その場で決めてしまいました。
家の購入
日系企業で働いていた時代に貯めた貯金を全て使い、公証人に書類を作成してもらい、さらに親に借金をして家具やシステムキッチンを入れました。この家に住み始めてから5年経ちます。
新築3年の時に天井に雨の染みができ、さすがに愕然としましたが、早急に職人にお願いして耐水加工をしてもらい、天井も全て乗り直してもらいました。幸い、それ以上ひどくなる事はなく、その後も木製の扉に防腐処理をしたり、壁のペンキを塗り直したりと、定期的にメンテナンスをすることで快適に暮らしています。
自分で設計して家を建てることもできる
我が家の場合、建て売りの物件の購入でした。しかし、もちろん土地だけ購入し、自分のこだわりの家を設計して建てたということも可能です。
しかし、信頼できる職人を探し、細かいデザインのイメージや希望などをインドネシア語で伝え、手を抜いたり建材をネコババしたり、石鹸を勝手に変えてしまうことの多い大工を監視するには、かなりの忍耐力が求められます。また、インドネシアでは建材や内装の様々なパーツまで、施工主自身が買いにいかなければいけないというケースが多く、かなりの手間と時間がかかります。
外国人による土地の所有
外国人名義の土地所有
かつては、外国人名義で土地を所有することは認められていませんでした。我が家の土地もインドネシア人の夫名義になっています。インドネシアで不動産を購入する場合は、信用できるインドネシア人の名義で購入する、というパターンがほとんどです。
しかし、これによって詐欺に巻き込まれたり、自分がお金を払って購入した家から名義人に不法侵入で追い出されたりなど、思わぬトラブルに巻き込まれるという人も少なからず存在するのです。
規制緩和
2015年に規制緩和が行われ、外国人も土地付きの住宅を購入できるようになりました。しかし、これには条件があり、外国人が購入できるのはジャカルタの場合は約8500万円以上の住宅、集合住宅の場合は約4250万円以上の住宅と決められており、実質的には高級住宅に限定されています。
しかし、これからさらなる規制緩和が行われる可能性もあり、外国人がインドネシアに戸建て住宅を持つこともますます現実的になるでしょう。
腕の良い職人を探すことが大切
インドネシアの家は非常に痛みやすく、こまめなメンテナンスが不可欠です。そのため、腕の良い信頼できる職人を探すことが非常に重要です。残念ながら、職人の腕にはばらつきがあり、責任を果たさないまま高額な料金を要求する職人も少なくはありません。
また、不動産会社が家を売った場合、その後の管理や補償等は一切してくれません。ひどい場合には音信不通になることもあります。家を購入した後の苦労やストレスは日本よりも格段に多いのが事実です。
しかし、だからこそ自分のライフスタイルに合った気に入った家を購入し、大事に手を入れながら暮らしていくことにより、家の愛着も深まります。
インドネシアの魅力にはまり、現在も長期滞在している人や、長期滞在を検討している人は、いつかインドネシアにマイホームを持つことをイメージしながら、住宅フェアを覗いてみてはいかがでしょうか。
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