私は結婚してからすぐ、主人の仕事の都合で中国の北京に引っ越してきました。北京は大気汚染でも有名ですので最初はかなり不安でしたし、私たちは2人とも中国語を話せないため、どうなるんだろうと思ったこともあります。ここでは北京に暮らして驚いたことを紹介します。
英語はまず通じない
中学1年生レベルの英語が通じない
これは私たちが1番最初に痛感した問題でした。北京と言えば国際都市ですし、それなりに英語は通じるのかもしれないと考えていましたが、まず通じません。例えば喫茶店に行ったとします。喫茶店で「コーヒー」を注文するぐらい簡単だと思いましたが、中国語のコーヒーは発音が違います。そのため最初はコーヒー一杯注文するにも苦労しました。主人はコーヒーに必ずミルクを入れるのですが、ミルクがついてこない場合に「ミルクをちょうだい」と言うにも、今度はミルクという単語が通じないのです。
チーズが通じない・・・
また喫茶店でサンドイッチを食べた時、主人はチーズが食べられないため「チーズを抜いてほしい」とお願いしたのですが、チーズという単語も通じませんでした。これらは日本語でも外来語の範疇ですので特に問題なく通じそうな気がしたのですが、中国ではその考えは通用しませんでした。ミルクが欲しいというだけでも苦労して、牛のものまねをしたり牛のイラストを描いたりしたものです。
中国独特の英語
中国ならではの英語表記のことをChinglish(チングリッシュ)と呼ぶことがあります。英語がほとんど通じない中国での英語表記は非常に面白いものがあり、例えば「写真撮影禁止」の英語表記が”No Shooting(撃ち合い禁止)”になっていたり、「転倒注意」の英語表記が”Slip Carefully(気をつけて滑ってください)”になっていたりなど、不思議な光景を目にすることがあります。日本人は少なからず漢字を読むことができますから、その英語表記に漢字がついていれば何を言っているのか想像がつきます。しかし中国語が読めない人にとっては相当面白いだろうと思われる英語があちこちに散らばっているのです。
英語ができる人もいるが・・・
また、上記で中国では英語が通じないと述べましたが、驚くほど英語が話せる人もいます。中国は教育格差が激しい国なので、高学歴の人、例えば中国の大学生の中には、日本の大学生以上に英語が上手な学生もたくさんいます。しかしそのような人と話していると、彼らの英語は非常に情熱的であると言うことに気づきます。中国語自体が情熱的な言語なのですが、それを直訳するためにこのような現象が起こると思われます。例えば主人は大学教員ですが、レポート提出が遅れてしまった学生からのメールに「提出が遅れて本当にごめんなさい!どうか私を罰してください!」と英語で書かれていました。日本語や英語ではありえない表現ですが、中国語として考えると中国人には違和感のない表現のようです。
とにかく人口が多い
どこにいってもスタッフの数が多い
中国は世界で1番人口の多い国です。それは一人っ子政策が行われていたという事からもよくわかります。そんな中国の首都北京ですが、北京の人口もとても多いです。しかし、人口が多すぎるという事は働き口が少ないということです。そのため、例えばお店に行くと各棚に1人は担当者がいて、買い物客に話しかけ、宣伝をしています。
私は北京以外の都市はよく分かりませんが、北京の地下鉄の入り口には手荷物検査をする場所があります。その手荷物検査の機械の周りには少なくとも3人のスタッフがおり、駅構内のエスカレーターの上下にもスタッフがそれぞれ立ち、多いときには電車のホームにも数人のスタッフが立っています。バスには、運転手以外に切符をチェックする係員、さらに乗客の安全を守るための係員がいて、多いときには1台のバスに3人の係員が乗車しているということもあります。とにかく人口が多いということがよくわかる社会です。
ファーストフード店では自分でお盆も片付けなくて良い
これは未だに慣れないのですが、ファーストフードのお店に行った時、中国では自分でお盆を片付ける必要がありません。というのは、片付けるための専門のスタッフがいるからです。これも人口が多すぎて無理やり働き口を作っているような感じが否めないのですが、ファーストフードで食事を終えた人は、お盆やゴミを片付けずそのままお店を出て行きます。そしてスタッフがその片付けをするのです。
係員は仕事を探している
これはファーストフード店に限らず、例えばショッピングモールのフードコートでも同じです。日本ならばレストランや喫茶店ならともかく、フードコートで食事をしたら必ず食器をお店に返します。中国のショッピングモールではそんな事はする必要がありません。係員が片付けてくれるからです。私は日本のショッピングモールのフードコートで食器を片付けずに去っていく中国人を見たことがあります。当時は「あらま」と思ったものですが、このような中国での文化を考えると、ある意味仕方がないことなのかもしれません。
食べ物を残す文化
お腹いっぱいだと示す
ちなみに中国の人は、大量の料理を残すことが多いです。片付けられる食器には半分以上食事が残っていることもあり、それを見るたびにもったいないと感じますが、これは中国の文化です。料理をもてなしてくれた人に、お腹いっぱいになったことを伝えるためにあえて残すのです。もし食べきってしまうと、料理を作った人は自分の料理の量が足りなかったのではないか不安になるそうです。
食べている最中でも片づけられる
ただ、食器に食事が残っていることが普通であるためか、まだ食べている最中の食器でも、気をつけないと片付けられてしまうことがあります。主人と食事に行き、まだ少し食事が残った状態で箸を置いて話をしていたら、スタッフが近づいてきてその食器を下げられてしまったことがあります。「お下げしてもよろしいですか?」なんて聞いたりはしないのです!だから、食事の最中に箸を置くときは注意が必要です。まだ食べている最中にスタッフが近づいてきたら、「まだダメ!」とはっきり主張しなければなりません。
公共交通機関でのマナー
日本で思うマナーは存在しない
例えば日本で電車に乗るときは、二列になって電車を待つ、降りる人を優先するなどは当然です。
しかしそのような常識は北京には存在しません。電車の扉が開けば降りる人と乗る人はまるで競争するように電車を降りたり電車に乗ったりします。また、電車に乗る前はなんとなく列になっているのですが、その列は電車の扉が開いた瞬間に消えます。後ろに並んでいたはずの人が、電車の扉が開いた瞬間に人を押しのけ、1番最初に電車に乗ろうとするような光景はむしろ日常茶飯事です。
座席は奪い合い
また、座席の強奪戦にも目を見張るものがあります。もちろんこれはいつも起こるわけではありませんが、座席が空いた瞬間に周りを押しのけてでもその席に近づき、座ろうとする人は決して少なくはありません。
電車の中ではスマホでゲームをしたり、映画を見たりする人が多いですが、中にはイヤホンやヘッドホンを使わない人もたくさんいます。つまりイヤホンやヘッドホンを使わず思い切り音を出してゲームをし、映画を見たりするのです。そのため電車の中は非常に賑やかです。
「社会的弱者」には優しい!?
ちょっと驚きましたが・・・
そんな公共交通機関ですが、1つ良い意味で驚くこともあります。お年寄りや妊婦、赤ちゃん連れの家族には多くの人が席を譲ります(本来はけが人もここに含めるべきですが、残念ながら公共交通機関でけが人を見たことがないため、ここでは言及しません)。特に私が驚いたのは、妊婦にも席を譲ると言うことでした。
意外に親切
私が妊娠して、初めて席を譲ってもらったのはなんと妊娠8週の時でした。まだお腹も出ていなかったのですが、冬でダウンジャケットを着ており、お腹の大きさはきっと周りからは分からなかったであろうということ、そしてバスでお腹をさすっていたせいか若い男の子が席を譲ってくれたのです。その時には偶然かなと思ったのですが、お腹が徐々に目立つようになると、特にバスでは本当に席を譲ってもらえることが多いです。中には「むしろあなたが座っていた方が!」と思ってしまうようなお年寄りが席を譲ってくれることもありますし、立っていても、壁に寄りかかることができる場所に立っている人が場所を代わってくれることもたくさんあります。
係員も助けてくれる
また前述の通り、バスには乗客の安全を確認する係員が乗っていますが、私が妊婦であると気づくと、空いている席を指して「ここにどうぞ」と誘導してくれることもあります。さらに満席の場合は、係員が乗客に「妊婦さんがいるから誰か席を譲ってあげて」「ちょっと君、この妊婦さんに席を譲ってあげて」と周りに声をかけてくれることさえあるのです。日本には妊婦さんに席を譲ることに関して賛否両論あるようですので、この点に関しては、中国は本当にすごいと感じています。
人生は常に勉強です!
北京に来る前は、「日中関係が複雑な中、どんなことが起こるんだろう」と不安に思ったこともありました。しかし中国に住んで2年近く経ちますが、未だに「日本人である」が故に嫌な思いをした事は1度もありません。もちろんこれは地域にもよるようで、田舎に行くと日本人であるとバレたら周りから嫌がらせをされると言うこともあるようです。しかし、ここ北京では少なくともそのような事は1度もありません。どこの国に行っても思いますが、実際に行ってみないとわからない事はたくさんあります。人生、常に勉強です。
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