「黄色いベスト運動」に見るフランスのもうひとつの素顔とは?フランスの「ジレ・ジョーヌ」について

2018年11月17日(土)を皮切りに、フランス中を大混乱させている「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動についてご存知でしょうか? 「何それ?ジレ・ジョーヌ(gilets jaunes) ? 黄色いベスト運動 ? 日本人には関係ない !」と思われる人も多いかと思いますが、フランスへ海外旅行を計画されている方は要注意!何故なら、この運動、今では凄まじい市民暴力運動と化してしまっているからです。

そもそもの始まりは・・・

そもそも、黄色いベスト運動は、フィリップ首相の燃料税引上げ発表をきっかけに、一般国民、とりわけ仕事場までマイカー通いを強いられている事の多い地方の住民運動から始まりました。フランスの車は、ほとんどがディーゼル車です。地球温暖化対策として、政府は燃料税の引き上げを決定したわけですが、これに対して運動家たちは、自然環境保護団体のスローガン「世界の破滅 (Fin de monde) 」を皮肉って「月末の破滅(Fin de mois)」と訴え、給料日前の月末になると食べていけない貧困層、特にブルーワーカーたちが立ち上がったわけです。そして今回のジレ・ジョーヌ運動にまで沸き起こりました。要するに、「我々は世界の破滅を待たなくとも、月末には餓死する」というわけです。この日を機に、毎週土曜日、フランス中でデモ運動が繰り広げられることになりました。

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因みにどうして黄色いベスト?

首をかしげる方のため、少々説明を付け加えさせていただきましょう。フランスでは、車には必ず安全用品として蛍光色の黄色いベストを保持していることが義務づけられています。安価で安全のための物なので、大抵みんなもっています。このよく目立つ色を利用して運動を扇動する、なかなか効果的です。さすが市民革命得意の国?、フランスのユニークかつ単純な発想には、少々アッパレでした。正直なところ、「なかなかやるじゃない?」なんて私は当初感心したくらいです。  というわけで、昨年の11月から毎週金曜日になると、日本大使館から在仏日本人のためメールが届きます。「明日の黄色いベスト運動状況」なるニュースです。私自身、そのサービスの恩恵を受けている在仏日本人なわけですが、運動が勃発してから早や5ヶ月半過ぎた現在も運動が続行しているため、大使館からの注意喚起メールをもらわなくても、毎週土曜日は外出しないようにという感覚が根についてしまいました。

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道路上でケンケンガクガク

因みに、個人的な経験エピソードですが、この運動の初日、ちょうど11月17日(土)に、どうしもパリへ行く用事があって、私が住んでいるノルマンディー地方から車で移動中、ある円形交差点に差し掛かった際、長い車の列に巻き込まれてしまいました。「果て、どうしたのかな?事故でも?」と思っていると、前方に黄色いベストを着込んだ数十人の人たちが、道路をブロックしているのが見えたのです。ここで面白いのは、運動に反対している人、運動に賛成の人が、道路のど真ん中でケンケン・ガクガクの論争している光景でした。そのために、道路が封鎖されてしまったのです。論争に参加していない人 (私もそのひとり) は、それでも、おとなしくじっと我慢して車の中で嵐が静まるの待つばかり。約半時間後、やっと円形交差点が開放されました 。やれやれ・・・でした。公共の場で人の迷惑も顧みず、こんなことができるなんて、やっぱりフランスです!

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魔の12月1日(土)

さて、運動が過激化したのは、12月1日(土)からでした。それまでは、ただ単に市民による抗議デモ行進、と軽く構えていた政府ですが、この日パリ・シャンゼリゼ大通りで、凄まじい暴動が爆発しました。凱旋門の一部が破壊されたり、タグ(落書き)されたりしたのです。また、この日、100台近い路上車が破壊され燃やされました。この衝撃的な映像は、世界中のマスコミも注目、ジレ・ジョーヌ運動のイメージ、というよりフランスのイメージが完全ダウンしてしまいます。しかしながら、この暴動は、ジレ・ジョーヌ運動の影にまわって、極右派・極左派各々の団体が自分たちの存在を見せしめようとしたのが原因だったのです。この時点までは、ジレ・ジョーヌ運動は、ごく温暖な市民によるデモ行進だったわけですが、この日を機会にジレ・ジョーヌ運動は大幅に変貌していきます。

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「ブラック・ブロック」とジレ・ジョーヌ

問題なのは、ジレ・ジョーヌ運動家たちが、「ブラック・ブロック」と呼ばれている極左翼派の団体と結合し始めたことです。このグループは、すでに昨年5月1日のメーデーの日に、オステルリッツ駅周辺の商店を片っ端からぶち壊した事件をきっかけにデビューしました。イデオロギーは、極左なので当然、反資本主義を掲げているわけですが、そのモットーの下、マクドナルドや銀行、自動車のショールーム、カフェ・レストランなどが無茶苦茶にされたのです。彼らの目的は、反資本主義を通り超して、反政府、反マクロン、反パリ、何よりも反警察の色を惜しみなく暴力で見せつけることです。このようなグループに、一部のジレ・ジョーヌ運動家が加担し始めたのが、大きな転換となりました。それまで、ジレ・ジョーヌ運動にどちらかといえば賛成、もしくは理解のあったフランス国民でしたが、暴力で訴えようとする動きには賛同しかねるというわけです。私もまさしくこの意見に賛成です。暴力は暴力でもって帰ってきます。それが証拠に、警察側は、放水射撃車や催涙ガスなどという手弱い手段ではなく、通称フラッシュ・ボールと呼ばれている強力なゴム発砲弾(仏語LBD)や、爆破性の高い煙幕弾を駆使することに何の躊躇もありません。このため、犠牲者が続出、すでに15人以上のデモ参加者が片目や片手を失くす大負傷を負っています。

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最終目的はマクロン辞任

ジレ・ジョーヌ運動は、パリだけではありません。ボルドー、トュルーズ、ルーアン、ニース、マルセイユ、リヨン、ストラスブールなどといったフランスの主要都市でも沸き起こっています。時には、激しい暴動運動にまでも発展しています。「68年のパリの5月革命なんて、ジレ・ジョーヌ運動に比べたら、優しい革命だった」などという意見もあります。反政府のみならず、労働組合連合でさえ、ジレ・ジョーヌ運動をなだめることができないでいます。燃料税引き上げから爆発した今回の社会運動、5カ月半経過した今では「マクロン大統領辞任」が彼らの終局目的となっているのです。

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最後に、フランスを旅行する日本人へ「黄色いベスト運動安全情報」として、在仏日本大使館のサイトを紹介しておきます。当日のデモに巻き込まれないように、事前にデモ開催予定地域を知ることができますし、また今日までの運動の軌道を読むことができるはずです。

フランスは素晴らしい国ですが、こと社会運動となると、日本人にはおよそ想像できない過激な面がありますのでご注意ください。まあ、これがフランスにして、フランスらしい個性であり、もうひとつの素顔なんですけどね・・・・。

在仏日本大使館サイト: https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/anzenjoho.html

「安全関係」→「フランス安全情報」→「安全対策」→「安全情報・治安情報に関する領事メール」

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