大学生の時、小中学生の短期ホームステイを引率したことがあります。小学校4年生から中学校3年生(実際には中学校3年生は受験でそれどころでは無い為、大抵最高学年は中学2年生です)までの子供たちが30人ほど集まり、2週間のホームステイをするというプログラムです。午前中はスタディーセンターなどで英語を勉強し、午後は街中を回ったり観光をしたりします。
このようなプログラムの添乗員をしていた、というと、「ただで海外に行けるんでしょ?」「ただで観光旅行ができて羨ましい」などと言われますが、添乗員として海外に行った場合、あくまでも仕事ですのでそこまで羨ましがられるような事は1つもありません。ここでは、その理想と現実について紹介します。
基本的には子供のトラブルと常に格闘
子供が抱えている問題を解決する
添乗員というのは、ただそこにいて通訳をすれば良いというわけではありません。子供たちがホームステイをする上で問題を抱えた場合、その解決をしなければいけないのです。つまり、子供たちがどのような問題を抱えているか、きちんとホームステイを楽しめているか、常にそばにいて見守っていなければいけません。
何か問題があったときに添乗員に話してくれる子供ばかりならば問題は無いのですが、中には添乗員になかなか話がかけられない、こちらから問題はないか聞いても口に出せない、という子供も珍しくありません。そのため、日記のようなものを採用し、毎日何でも良いので日記を書かせて提出させたことがあります。口では言えなくても日記ならば書けるということで問題を書いてくれる子も多く、そこから問題が見つかったこともありました。
ホストファミリー側の相談にも乗る
ホームステイをする場合、問題を抱えるのは子供だけではありません。ホストファミリーも子供たちを傷つけないように一生懸命取り計らってくれるのですが、中には子供が何を考えているのかわからない、楽しそうな顔をしなくて不安、などと問題を抱えるホストファミリーもいます。
ホストファミリーから相談された場合は別個で子供たちと話し、問題がないことを確認しなければいけません。このように、子供とホストファミリーの双方からの相談に乗っていなければいけませんので、海外にいる間は常に気が抜けない状態です。
夜遅くまで忙しいこともある
子供たちは基本的に3時から4時ごろにホストファミリーに迎えに来てもらい、ホームステイ先に帰ります。添乗員も子供たちが全員家に帰ったら基本的には仕事が終わりなのですが、子供たちやホストファミリーの状態によってはまだまだ家に帰れないこともあります。
アメリカに行った時、小学校4年生の女の子がホームシックにかかってしまい、本人もホームステイ先では泣いてばかりでホストファミリーも本人も大変な思いをしていたことがあります。その時は日本の事務所と相談し、その子のホームステイ先に一緒に行き、時間を一緒に過ごしました。私自身はどのようにして自分のホストファミリー宅に帰ったのか実は全然覚えていないのですが、その子が寝るまで一緒にいたように思います。
このように、いわゆる「残業」も珍しくありません。しかし、たとえ3時に仕事が終わって家に帰ったとしても、8時まで「残業」で働いたとしても、収入は変わらないのです!
ただで観光できる?とんでもない!
子供の世話で手一杯
また、ホームステイの添乗員をしていたというとただで海外に行ける、ただで観光できる、と思われることもあります。確かに航空券等は全て事務所の方が手配していますし、私が支払うお金と言えば、現地で自分が購入するものに対してのみだけです。
しかし、だからといって羨ましがられても困ります。というのは、実際は子供の世話で手一杯で優雅に観光しているところではありません。例えば博物館などに行き、自由時間にしたとしても、自分はのんびりと博物館を見て回るのではなく、むしろ博物館をいそいそと歩きまわり、ひとりでいる子供がいない間、道に迷って泣いている子供はいないか、などということを確認しなければいけません。
カナダに行ったとき、ドラムヘラーという大きな恐竜の博物館に行ったことがあります。世界的にも有名な場所らしく、事務所からも「ここは大きな博物館だから楽しいよ」と言われていたのですが、いざ博物館では子供たちが一人ぼっちになっていないから、ちゃんと楽しめているか、などということを確認するために2周しました。しかし、見ているものは展示物ではなく子供たちなので、どのような展示があったか何一つ覚えていません。
どこに行ったかもよく覚えていない
もう少し詳しくいうと、どこに行ったのか、それがどのような場所だったか、などという事はよく覚えていません。どこに行ったのかという事は予定表などを何度も確認しているためその時は覚えているのですが、しっかり観光しているわけではないため、後から思い返すとどこに行ったか思い出せないこともあります。例えば、「ドラムヘラーの博物館に行った」という事は覚えていても、具体的にどのような展示があったのかという事までは覚えていません。
もちろん人によるとは思うのですが、仕事で海外に行っている以上、優雅に観光を楽しんでいる余裕は無いのです。中には観光を楽しめる位のベテランの添乗員もいるでしょうし、むしろ仕事には関心がなく観光ばかり楽しむ添乗員もいるかもしれません。しかし、私はそのような余裕がなかったため、何度か添乗員の仕事をしましたが、よく覚えていないのが現状です。
仕事は仕事、遊びではない!
しかし、自分はそれで満足しています。やはり子供のためのホームステイプログラムですし、仕事は仕事だと割り切っています。帰国後のオリエンテーションで子供たちが見せてくれる笑顔や「本当に楽しかった」という言葉、保護者たちの笑顔や「ありがとうございました」という言葉に励まされる仕事だと思っています。
コメントを残す